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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

メソポタミア殺人事件

2015-11-25 21:19:51 | 読んだ本
クリスティ/蕗沢忠枝訳 昭和61年 新潮文庫版
あるだけ読み返してるクリスティの推理小説。
原題「MURDER IN MESOPOTAMIA」、そのまんまメソポタミアで遺跡を発掘してる調査団のなかで起きた殺人事件。
で、たまたまその地域にいたポワロが呼ばれてって、事件の解決にあたる。
そのへんにポワロがいたってことは、もしかしたら「オリエント急行」あたりとつながりがあるのかもしれないけど、私はポワロもののマニア・研究者でないので、時系列とかはよくわからない。
(べつに、同時期にポワロが南アメリカ大陸にいた、って話が存在してたとしても、そんな矛盾だとか気にしないし。)
物語の語り手は、たまたま調査団の団長に雇われることになった、看護婦さんという、わりと珍しい設定。
看護婦による世話を必要とするのは、団長の夫人で、だぐいまれなる美貌の持ち主、そのやることなすことは現地では何事につけて「采配をふるっている」と評されるような女性。
私は推理小説に鈍いので、最初は誰が殺されるんだか全然見当つかなかったんだけど、そのうち脅迫状の話とか出てきて、そんな流れで殺人が起きる。
ポワロは、例によって、些細な物的証拠なんか探そうとしないで、思索によって解決しようとする。いわく、
>ごく当初から、わたしは、この事件を解明するには、外的な痕跡や手掛りを求めるのでなしに、人間の個性と個性の衝突や、心の秘密に、より真実な手掛りを求めるべきだと感じていました。
だそうで、被害者がどんな人となりであったかとか、誰にどんな動機がありえるだろうかとかってあたりを、関係者ひとりひとりと会見していくなかで探ってく。
それで、最後には、証拠はないけど、こういうふうに考えざるをえない、って感じで推論を披露して終わる。
ちなみに、途中で、
>(略)何かがあると、わたしの職業的勘が言っています。(略)殺人は癖になる…」
だなんて余計なこと言うから、もう一件殺人が起きてしまうんだが。
まあ、結末なんかより、事件に携わった最初に関係者一同を集めて、いろいろとしゃべったり質問したりするんだが、そのことについて、
>イギリスでは、競馬のレースの前に、馬のパレードがありますな? 出走馬が、しずしずと、正面観覧席の前を、行進します。つまり全観衆が、じっくり馬を見て、判断をくだす便宜のためですね。これと同じ目的で、わたしは、あの小さい集会を開きました。つまり競馬用語を使えば、出走馬の品定めをしたわけですな
なんて例えを使うとこが妙におもしろくて印象に残ってしまった。
あと、かなりどうでもいいけど、登場人物の男性のひとりが、調査団長の夫人に関して、「雪の女王と少年カイについての北欧の童話の女王に似てる」って言い方をしたときに、ポワロは「あの物語には、少女も登場していましたね。小ちゃいゲルダって名でしたか?」なんて不思議な知識を披露する。そういうの妙に気になるんだよな、読んだことないけど。
さてさて、ディテールはともかくとしてもだ、本筋についてはすっかり内容を忘れてるのを、すごいひさしぶりに今回読み返したわけだが、特におもしろいとは思わなかった。
初めて読んだ当時の私も同じ意見だったらしく、持ってるポワロものは、ここまででおしまい、これよりほかには読み進んでない。
持ってる数冊の、読んだ正確な順番なんかはおぼえてないけど、本書あたりで、私にとってはポワロは趣味ぢゃない・どうでもいい、ってとどめを刺したんぢゃないかなって気がする。
ただ、それでも、ここんとこ、むかし一部は読んだけど、あとは読むのヤメちゃったシリーズものを、もうすこしだけ読んでみるか、ってのを読んでは並べてみたりする流れになってて、ポワロについては、あとひとつだけ、すごい有名だけど読んでないやつが、とても気にかかり出したので、それだけは読んでみる気になっている。

コメント
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