ロバート・B・パーカー/加賀山卓朗訳 2011年 ハヤカワ・ミステリ文庫
これも年明けぐらいにふつうに書店で買った文庫、ついこのあいだ飛行機での移動の時間とかで読んだ、なんで長距離移動になると読むんだろうねと自分でも思うのだが、スペンサー・シリーズの35作目。
原題は「Now & Then」、なんのこっちゃと思うのだが。
依頼人の男は、妻の素行を調べてくれという。
しょっちゅう外出して帰るのが遅い、帰ってくると酔っていることがある、態度が無愛想だという。
浮気してるのかと問うスペンサーに、男は彼女がそんなことするとは思ってないと言う、信じるのはいいけどねえ、裏切られたとき痛いよ。
離婚がらみの仕事はふだん引き受けないスペンサーだけど、今回は引き受ける。
だけど、依頼人は自分の職業や住所を打ち明けようともしない、ちょっとヘン、妻は大学教授だから、そこで見つければいいと。
かくして、お決まりの尾行とかを始めると、あっさりと大学の同僚同士での浮気のしっぽをつかむことができる。
ちょっと尾行の手というかアシが足りないので、ホークにも手伝ってもらうのだが。
あの依頼人の態度では、言葉で報告しても妻の浮気を信じないだろうと考えたスペンサーは、めずらしくも(自身のモラルに反するような)盗聴器なんか仕掛けて現場の証拠の録音をする。
その録音した現実を依頼人に突きつけたところ、つらい思いに耐えた依頼人は妻を家から放り出して、スペンサーの仕事は終わりになる。
でも、その解決の後味のわるさと、録音された会話の内容が気になったスペンサーは、まだ手を引かない、例によってあちこちを突っつきまわすことになる。
浮気男と女の両方を尾行するために、ホークだけぢゃ人数足りなくて、これまたおなじみのヴィニイ・モリスも駆り出される。
ちなみにスペンサーのヴィニイ評は「私が出会ったなかで最高のガンマンであるふたりのうちのひとりだ」であって、「きわめて正確に動く」とも言ってるが、それは撃ちあいのときだけぢゃなくて、サブマリン・サンドイッチを食べるのも「体の動きが非常に正確なので、シャツにまったくこぼさずに食べることができる」なんて妙な例を出しているのがおかしい。
さて、そんなことしてるうちに、やっぱいつもどおり殺人事件が起きてしまい、こうなるとスペンサーは真の解決をつきとめるまで納得がいかなくなる。
ヴィニイ・モリスは理解できないので、誰からも金が出ないのにどうして放っておかないのだと当然の疑問を口にする。
ホークの答えは「スペンサーはものごとを放っておかないのだ」(p.107)である、さすが理解者。でもホークも重ねて何故かと問われると「わからん」としか言えない。
ヴィニイに「理由はなんだ」と問われたときのスペンサーの答えは「歌も踊りもできないからだ」(p.110)なんだけど。
精神科医である恋人のスーザンの心配は、今回の依頼人にスペンサーが自身を重ねている、二十年くらい前(二十年も前なんだ!?)スペンサーとスーザンが一時期別れて、スペンサーがスーザンを奪回しに行った出来事にとらわれてるんぢゃないかと。ちなみにホークも同意見。
なのでスペンサーが自らの手でホントに悪いやつを捕まえたがってるのは理解するけれど、スーザンはスペンサーが充分な距離を置かないがために、殺されてしまうのではないかと心配する。
こうなってきちゃうと、もうミステリとかハードボイルドとかってんぢゃなくなって、登場人物たちの個人的な問題が主題になってきちゃう、昔読んでたときはそれが嫌になって投げ出したけど、今回は二度目なので私は読み続けてる。
さてさて、そんなクビを突っ込み過ぎてる状況のなかで、FBIとか何だかわかんないけど反政府主義の組織みたいのがからんできて、関係者の周辺は物騒になっていく。
敵も強力で、スペンサーの弱点はスーザンだと見抜いて、そこ攻撃してくるので、“最高のガンマンのふたり”のうちのもうひとりのチョヨが招集されて護衛につく。
なぜ手を引かないのかというスーザンに、スペンサーは「片をつけなければならない」という。
過去をひきずっているスペンサーを心配してるスーザンは、片をつけなければならないのは、最近の事件なのか、ずっと前に私たちに起きたことなのかと問う。
「なんなんだ、スーザン、これはおれがすることだ。きみがすることにおれは指図しないだろう」(p.194)
と人前で初めてスーザンに声を荒げてしまったスペンサー、やっぱ何かひきずってるということか。
まあ、いろいろあるが最後は望むどおりの結末へこぎつけることができて、また成長することができたのかもしれない、騎士道ずきな私立探偵さん。
どうでもいいけど、今回の物語では、すったもんだしてる最中に、スーザンが結婚を考えないかと提案する、まあめずらしい、まだそんな考えあったの。
事件解決に走り回りながらも、そのことについて真剣に考えたスペンサーの答えは、以下のようなもの、とりあえず今のところは。
「おれたちは結婚しそうなタイプだ」
「そうね」
「一方、何も壊れているものはない」
「なのになぜ修復しなけれなならない?」スーザンが言った。
「たぶんな」(p.262)
これも年明けぐらいにふつうに書店で買った文庫、ついこのあいだ飛行機での移動の時間とかで読んだ、なんで長距離移動になると読むんだろうねと自分でも思うのだが、スペンサー・シリーズの35作目。
原題は「Now & Then」、なんのこっちゃと思うのだが。
依頼人の男は、妻の素行を調べてくれという。
しょっちゅう外出して帰るのが遅い、帰ってくると酔っていることがある、態度が無愛想だという。
浮気してるのかと問うスペンサーに、男は彼女がそんなことするとは思ってないと言う、信じるのはいいけどねえ、裏切られたとき痛いよ。
離婚がらみの仕事はふだん引き受けないスペンサーだけど、今回は引き受ける。
だけど、依頼人は自分の職業や住所を打ち明けようともしない、ちょっとヘン、妻は大学教授だから、そこで見つければいいと。
かくして、お決まりの尾行とかを始めると、あっさりと大学の同僚同士での浮気のしっぽをつかむことができる。
ちょっと尾行の手というかアシが足りないので、ホークにも手伝ってもらうのだが。
あの依頼人の態度では、言葉で報告しても妻の浮気を信じないだろうと考えたスペンサーは、めずらしくも(自身のモラルに反するような)盗聴器なんか仕掛けて現場の証拠の録音をする。
その録音した現実を依頼人に突きつけたところ、つらい思いに耐えた依頼人は妻を家から放り出して、スペンサーの仕事は終わりになる。
でも、その解決の後味のわるさと、録音された会話の内容が気になったスペンサーは、まだ手を引かない、例によってあちこちを突っつきまわすことになる。
浮気男と女の両方を尾行するために、ホークだけぢゃ人数足りなくて、これまたおなじみのヴィニイ・モリスも駆り出される。
ちなみにスペンサーのヴィニイ評は「私が出会ったなかで最高のガンマンであるふたりのうちのひとりだ」であって、「きわめて正確に動く」とも言ってるが、それは撃ちあいのときだけぢゃなくて、サブマリン・サンドイッチを食べるのも「体の動きが非常に正確なので、シャツにまったくこぼさずに食べることができる」なんて妙な例を出しているのがおかしい。
さて、そんなことしてるうちに、やっぱいつもどおり殺人事件が起きてしまい、こうなるとスペンサーは真の解決をつきとめるまで納得がいかなくなる。
ヴィニイ・モリスは理解できないので、誰からも金が出ないのにどうして放っておかないのだと当然の疑問を口にする。
ホークの答えは「スペンサーはものごとを放っておかないのだ」(p.107)である、さすが理解者。でもホークも重ねて何故かと問われると「わからん」としか言えない。
ヴィニイに「理由はなんだ」と問われたときのスペンサーの答えは「歌も踊りもできないからだ」(p.110)なんだけど。
精神科医である恋人のスーザンの心配は、今回の依頼人にスペンサーが自身を重ねている、二十年くらい前(二十年も前なんだ!?)スペンサーとスーザンが一時期別れて、スペンサーがスーザンを奪回しに行った出来事にとらわれてるんぢゃないかと。ちなみにホークも同意見。
なのでスペンサーが自らの手でホントに悪いやつを捕まえたがってるのは理解するけれど、スーザンはスペンサーが充分な距離を置かないがために、殺されてしまうのではないかと心配する。
こうなってきちゃうと、もうミステリとかハードボイルドとかってんぢゃなくなって、登場人物たちの個人的な問題が主題になってきちゃう、昔読んでたときはそれが嫌になって投げ出したけど、今回は二度目なので私は読み続けてる。
さてさて、そんなクビを突っ込み過ぎてる状況のなかで、FBIとか何だかわかんないけど反政府主義の組織みたいのがからんできて、関係者の周辺は物騒になっていく。
敵も強力で、スペンサーの弱点はスーザンだと見抜いて、そこ攻撃してくるので、“最高のガンマンのふたり”のうちのもうひとりのチョヨが招集されて護衛につく。
なぜ手を引かないのかというスーザンに、スペンサーは「片をつけなければならない」という。
過去をひきずっているスペンサーを心配してるスーザンは、片をつけなければならないのは、最近の事件なのか、ずっと前に私たちに起きたことなのかと問う。
「なんなんだ、スーザン、これはおれがすることだ。きみがすることにおれは指図しないだろう」(p.194)
と人前で初めてスーザンに声を荒げてしまったスペンサー、やっぱ何かひきずってるということか。
まあ、いろいろあるが最後は望むどおりの結末へこぎつけることができて、また成長することができたのかもしれない、騎士道ずきな私立探偵さん。
どうでもいいけど、今回の物語では、すったもんだしてる最中に、スーザンが結婚を考えないかと提案する、まあめずらしい、まだそんな考えあったの。
事件解決に走り回りながらも、そのことについて真剣に考えたスペンサーの答えは、以下のようなもの、とりあえず今のところは。
「おれたちは結婚しそうなタイプだ」
「そうね」
「一方、何も壊れているものはない」
「なのになぜ修復しなけれなならない?」スーザンが言った。
「たぶんな」(p.262)
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