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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

猫を棄てる 父親について語るとき

2020-05-10 18:47:27 | 村上春樹

村上春樹 絵・高妍 二〇二〇年四月 文藝春秋
二週間前か、こんな新刊が出てること突如知って、あわてて書店に買い行った。
「猫を棄てる」ってタイトルがすごくて何事かと思わされるけど、内容は副題のほうで、実の父親について語ったもの。
ただ子どものときに、父親の自転車の後ろに乗って一緒に海岸へ猫を棄てに行ったことがある、ってエピソードで始まるもので。
その棄てたはずの猫が戻ってきちゃったってのを読んだとき、ああ『ふわふわ』のなかにそんなことあったよな、って思ったんだけど、違いました。
『ふわふわ』のほうでは「ぼく」の家にきた猫が、もとの飼い主のところへ戻っちゃう、それを自転車の荷台にのせて連れ戻したって話だった。
例によって、出たばかりの本については、なかみをここにズラズラと並べ立てることはしないようにしたいんだが。
父親への思いを述べるっていうよりは、淡々と父親の生涯に起きた事実を書いたって印象が残った、とりあえず。
京都のお寺の次男で僧侶の資格を持ってたっていうんで、前に何かのエッセイに両親は教師って書いてたはずなので、おやって思ったけど、やっぱ教師になってました、実家継ぐのは回避して。
でも、それよりなにより、1917年生まれなので、時代にさからえず軍隊にとられたって話のほうが重要。
タイミングがまちがっていれば、その部隊は激戦地に赴くことになり、そうしたら戦死していただろうと。
母親のほうにしても、当初結婚するはずだったひとは戦争で亡くなったらしいと。
ちょっと運命が違っていたら、自分はこのふたりのあいだに生まれてくることはなかったんだとか、そういうこと考えたら不思議だっていえば不思議なんだが、どこ偶然で何が必然なのかは誰にもわかんないことで。

コメント
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