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好きな本とかについて、ちょこちょこっと書く場所です。蔵書整理の見通しないまま、特にきっかけもなく08年12月ブログ開始。

大王

2021-10-16 18:35:16 | マンガ

黒田硫黄 1999年 イースト・プレス
前にいしかわじゅんの『秘密の本棚』を読んだときに、漫画評論家的扱いになってるため、どんな漫画が面白いか訊かれることが多くて、「しばらく前は、黒田硫黄が一番面白いと答えていた」という一節があって、とても気になった。
そのホメ方がすごくて、
>黒田硫黄の漫画を読むたび、ぼくは、日本の漫画は豊かだなあと思うのだ。
>黒田硫黄は、大ヒットするタイプでは今のところない。(略)
>驚いたことに、彼の作品は、どれを読んでも面白い、デビューから現在に至るまでの、どの作品を読んでも面白いのだ。(略)
>どう面白いのかというと、読む側の興味を惹くのだ。どんなテーマを扱っても、思わず引き込まれてしまうのだ。(略)
>(略)強引にではなく、するすると引っ張り込み、気がついた時には、もう黒田世界にぼくらは入ってしまっているのだ。
>(略)黒田硫黄の漫画は、表面的には少ない情報量で、多くの情報やイメージが読む側に伝わってくるのだ。(略)
>彼は、たとえば人物を正確に描く能力はそう高くないだろう。対象を正確に写し取るという技術は、おそらく低いだろうと思う、しかし、描くものの本質を見切る力は、群を抜いている。(略)(『秘密の本棚』P.42-44「豊かな日本の漫画」)
という調子であって、こちらとしては読んだことないのが恥ずかしくなってきてしまったので、さっそく探すこととした。
茄子とか天狗の話が有名らしいんだけど、うまく見つけられなかったので、とりあえず手に入りやすかったこの古本を買い求めた。
サブタイトルに「DAIOH:The collection of short stories by KURODA,Iou」とあるように、短編集である。
それもよろしい、はじめて読む漫画家で、いきなり何巻にもわたる長編にあたってみて、合わなかったら悲しいから。
著者あとがきに曰く、「いろいろの寄せ集め」ということだが、まあ短編集なら全部が気に入らなくても何かしら自分にとっておもしろいものあるかもしれない。
デビュー作という「蚊」は、人間の女のカッコした蚊がやってくるという、なにがなんだかって話だが。
「象夏」って、同棲してた男が一切を持って出て行っちゃって、残された女性がアパートの隣の部屋を訪ねると、部屋いっぱいの大きさの象がいた、って話、なんか昔の村上春樹の象系につながる感じする。
若いころに読んでたら、不条理とか、なんのメタファーやらとか、こんな夢を見た的なとか、おもしろがってたのは間違いないと思うけど、どうも最近そういうのが得意ぢゃなくなったのは、こちらの都合ではあるが。
あとがきに「この漫画はバカ丸出しです」とある「THE WORLD CUP 1962」が一読したなかでは気に入りかもしれない。
しょうもない子供の喧嘩の話かと思ってたら、小林少年が何故かロボットに乗り込んだころ、キューバ危機に端を発して世界中が核戦争に巻き込まれるって思わぬ展開をみせる。
この短編集では、作者の象愛もわかるけど、ロボット愛も相当なものだなって印象が残った。
コンテンツは以下のとおり。
西遊記を読む
THE WORLD CUP 1962
象夏


南天
象の散歩
夜のガレージ
メトロポリス
あさがお
まるいもの

コメント
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