川上未映子・村上春樹 2017年4月 新潮社
5月の連休のころに書店に積まれているのを買ったんだが、読んだのはごく最近。
小説ぢゃないし、すぐ読まなくてもいっか、って思ってたんだが、読んだらわりとおもしろかった、早よ読めばよかった。
「川上未映子訊く/村上春樹語る」ってなってるように、インタビュー形式。
ただし、インタビュアーのほうが単なる聞き手ぢゃなくて、けっこう負けずに語ります。
『職業としての小説家』の出たあとに一度インタビューしたのと、そっからの流れで『騎士団長殺し』を書き上げたあとに、それに関してってことで3回にわたるロングインタビューを決行。
なので、けっこう小説の書き方、みたいなとこ問うてる場面が多い。
ただし、読んでて感ずるのは、なにか「こういうふうに考えますか」とか「こういうことってないですか」とか問われたときに、村上さんがあっさり「ない」って答えることが多いってこと。
あと、以前の自作を読み返すことはないし、書いたあとは忘れてしまう、みたいなこと言うのは、ホントかいなと思うが、ホントなんだろう、ちょっと意外だけど。
しかし、
>(略)村上さんは「小説家にとって、小説に登場するシンボルやメタファーというものは、そのまま現実として機能する」とおっしゃっているんですね。
みたいな水の向けられ方されて、
>そんなこと言ったっけ?(p.110)
は無いだろ(笑) そんなかっこいいこと言っといて、忘れるかね。
それでもなんでも、物語の重要性については、いつものとおり、ちゃんと表明している。
ところが、物語があることは大事なんだけど、小説に出てくるものや、いろんな展開については、解釈を読む側にまかせちゃってるのが、チープトリックをかけないものの造り手たるところみたいで。
>それはなかなか大事なポイントかもしれない。この小説の中で。どうしてなのかは僕も知らないけど。(p.154)
とか、
>頭で解釈できるようなものは書いたってしょうがないじゃないですか。(p.116)
とか言われちゃうと、“この作品で作者の言いたかったことは何でしょう”みたいな国語のお勉強みたいな本読みをする人は困っちゃうんでしょうね。
それと関連してくると思うんだけど、今回このインタビューのなかで、文章が大事だって語られてるとこには、とてもハッとさせられた。
>でも多くの作家は、発想とか仕掛けが先にあって、文章をあとから持ってくる。(略)いや、僕の感覚からすれば、同時にあるものじゃなくて、まず文章がなくちゃいけない。(p.219)
って、すごい宣言だと思う。
ちなみに、
>そろそろ読者の目を覚まさせようと思ったら、そこに適当な比喩を持ってくるわけ。文章にはそういうサプライズが必要なんです。(p.24)
みたいな楽しいテクニックについての説明なんかもある、なるほどねえ。
これ読んで、また新しい小説を待つのが改めて楽しみになった気はする。
>(略)人が人生の中で本当に心から信頼できる、あるいは感銘を受ける小説というのは、ある程度数が限られています。(略)一生のあいだにせいぜい五冊か六冊だと思うんです。(p.188)
なんて村上さんは言うんだけど、それしかないかと思うと、なんかとても寂しくなる。
それっぽっちしかないのか、人生は。
どうでもいいけど、タイトルに「みみずく」があるのはどうしてなんだろと思ったんだが、『騎士団長殺し』に屋根裏のみみずくが出てくるあたりから引っ張ってきたらしい。ぜんぜん忘れてた、それ。
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