別冊宝島編集部編 2019年 宝島SUGOI文庫
これは11月に『完全版証言UWF』を見つけたときに、近くに並んでたんで買ってみた文庫。
未解決事件の秘話とか、そーゆーノリは嫌いぢゃない、テレビで再現ドラマもんなんかやっててもなんとなく楽しく見ちゃったりする。
表紙は有名な三億円事件のモンタージュ写真だしねえ、いい感じだ昭和という時代は、事件当時のことは知らないが、時効になるときのザワザワは記憶の片隅にある。
いまぢゃ世間中カメラだらけなので、こういう犯罪そのものとか追っかけ方とか成立しなさそうな気がするけど。
それにしても、三億円事件の容疑で任意同行、別件逮捕された男性がいて、マスコミ報道の被害にあって、その元配偶者が図書館の新聞縮刷版の削除・閲覧禁止の措置まで求めて戦ったってのは知らなかった。
戦後すぐの時期は、よくわかんない鉄道での殺人事件とか起きてて社会の混迷してた部分あったみたいだが、昭和40年代もけっこう今から思うとムチャクチャだったように思える。
特に連合赤軍についてとか読むと、なんなのそのよくわからないエネルギーは、って気がしちゃう、その後の時代の若者にはそういう熱いものがないから。
すごい暴力なんだけど、なんなんだろうね、実際に戦争をした世代は牙を抜かれたみたいになさけないくらい非暴力化したのにくらべて、やっぱ戦争したくてしょうがない人間の本能みたいなもんのあらわれなんぢゃないかと想像してしまう。
その後のこの国は、そういう戦争したい欲望は内に仕舞いこんぢゃって、暴力は弱いもんイジメ的な方向に向かって発散されてってるのかな。
でも、凶悪事件はむかしのほうが確実に多かったのに、やたら治安が悪化したような宣伝をして不安をあおりつつ、厳罰を声高に叫ぶのって現代の不思議な特徴ではある。
ただ病んぢゃってて、まともな動機ぢゃない人殺しは、いまのほうが多いのか、目立つとはいえるのかもしれない。
コンテンツは以下のとおり。タイトル長いのはしょうがないねえ、それにしても妙な体言止めは中吊り広告系に特有な文体みたい。
世紀の捕物帳「三億円事件」痛恨の「誤認逮捕劇」と犯人と疑われた男の悲劇
新資料から読み解く連合赤軍事件「狂気の原点」印旛沼事件の全真相
「日航機墜落事故」いまだくすぶり続ける「米軍誤射説」の真贋
昭和の謎事件「帝銀事件」平沢貞通の実子と呼ばれた名プロデューサーの告白
「力道山を刺した男」実娘が語った「父・村田勝志」の知られざる晩年
長嶋監督「電撃解任劇」いまなお囁かれる「電話盗聴疑惑」の真相
私が封印した「車椅子の田中角栄」スクープ写真
「よど号事件」発生から10年――リーダー・田宮高麿の単独会見はこうして実現した
伝説の「猪木VSアリ」アリが猪木側に送っていた「エキシビション」を望む肉声メッセージ
「荒木虎美」から「三浦和義」まで昭和「保険金殺人」史
謎と狂気に満ちた「戦前」の未解決事件
元『中央公論』編集長の回想「風流夢譚」事件が私に教えた「言論の自由」より大切なもの
昭和10大未解決事件知られざるサイド・ストーリー
事件(1)「アナタハン島の女王」事件
事件(2)免田事件
事件(3)下山事件
事件(4)名張毒ぶどう酒事件
事件(5)狭山事件
事件(6)布川事件
事件(7)「黒い霧」事件
事件(8)ロス疑惑事件
事件(9)グリコ・森永事件
事件(10)「赤報隊」事件
増田俊也 令和元年 新潮文庫版
去年11月に書店でみかけて買った文庫、『七帝柔道記』がめちゃめちゃおもしろかったので期待できたんで。
北海タイムスって購読したことはないけど、かつてあった地方紙。
そういやあ、前にタイムス杯って特別競走を札幌開催でやってたんだけど、会社つぶれたとかで直前に競走名を変更したことがあったなあ、オープン競走だっていうのに。
主人公は横須賀出身、早稲田大を卒業した野々村巡洋君、1990年の新入社員。(なんか1990年っていうと親近感をもってしまう。)
著者の作品なら主人公は体育会柔道部出身と思いきや、そうぢゃなくて、なんかっつーとスミマセンってあやまってばかりの押しの弱そうな意外な設定。
学生時代は司法試験を目指してたはずなのに、いつのまにかマスコミ志望に変更、あちこち試験を落ちてしまい、北海道に就職することになった。
それでも今年の就職試験を受けなおして、どこか内定とったら今のところを辞めてしまおうとか考えたりしてる、よくないよ、そういう了見は。
新聞社入ったからには取材記者になって記事書くのが希望だったんだけど、研修終わったら望まない部署に配属されてしまった。
そこで仕事を直接教わることになったひとが、めちゃめちゃ厳しくて、ボツの原稿はどこをどう直せなんて言ってくれずにゴミ箱に直行とかいう目にあう。
会社はすでに経営厳しい状態にあるらしく、人が少ないのもあって、仕事量は多いし、労働時間は長いし、休み少ないし、大変な職場。
本業がちっとも身につかないのに、主催のマラソン大会や花火大会の警備に駆り出されたり、早朝野球にむりやり参加させられたりと嫌なイベントも盛りだくさん。
それでいて給料は低い、入ってから愕然とするんだけど、そういうことはよく調べてから入りましょう、って外からぢゃわかんないか管理職の年収なんかまでは。
多くの社員も副業して収入を補ったりしてんだが、きついだけぢゃなく、家族を養うこと考えて辞めてっちゃうという選択をするひともいる。
でも、そのぶん残ってる社員の新聞づくりにかける気持ちは熱い。
主人公が柔道部ぢゃないかわりに、そういうキャラはほかにちゃんと立てられてて、柔道も空手もいる、そのひとたちは若手なんだけど、当然熱い。
若手ぢゃない先輩社員たちも、基本的に熱いものがある、慣れないととっつきは野蛮っぽいかもしれないけど後輩にはやさしいし。
物語すすむうちに、いろいろ出来事はあるんだけど、まあよく男が泣く場面がでてくるなって印象はもった。
でも最後のほうはグッと盛り上がってきて、引き込まれるようにスピードあげて一気に読むことになった、やっぱスポ根的感動に近いようなものがあって、いい、「がんばれ」「よくやった」と言いたくなるような。
それと、新聞づくりの詳細が描かれてる場面があって、そういう職人技とかテクノロジーとかについて初めて知ることのできるフィクションに触れるのは、あいかわらず私は好きだ。
どうでもいいけど、本書読んだすぐあとに「ペンタゴン・ペーパーズ」って映画をテレビで観たんだが、新聞社のなかを見て、なんとなくなるほどって気がした。
別冊宝島一七九号 一九九三年 宝島社
プロレスのつづき。実家の押入れからみつけた別冊宝島の読本シリーズ。
まあタイトルのとおりで、語り継がれるプロレスの試合について、いろんなライターが書いてる。みんなプロレス好きだから、なかなか熱い。
主に80年代から90年代に入るところ、ときどき70年代もありって感じか。
いま数えてみたら全部で95編あって、読むのはなかなか疲れる。(裏表紙に「たっぷり新書2冊分」という表記がある。)
たいがいは見開き2ページで1話なんだけど、なかにはそれより長いのもあって、やっぱボリューム多いもののほうが読んでて楽しい。
そんな長めのやつのタイトルを抜き出してみると以下のとおり、12個あった。
ルー・テーズ×グレート草津→68年1月3日 裁きのバックドロップ
長州力×ジャンボ鶴田→85年11月4日 プロレスの時代を変える完熟の頂上対決
ハンセン、ゴーディ組×ブロディ、スヌーカ組→87年11月22日 天龍源一郎×ブルーザー・ブロディ→88年4月15日 苦悩する超獣、昭和プロレス最後の大勝負!
天龍源一郎×長州力→93年1月4日 その日、二人の“革命家”はただ肉体だけを賭けた!
高田延彦×デニス・カズラスキー、佐野直喜→92年12月20日 レザー・フェイス×松永光弘→同日 頭へ背中へ五寸釘ズブリ、“人間生け花”の謎を解く!
スーパー・タイガー×藤原喜明→84年12月5日 藤原喜明×スーパー・タイガー→85年1月16日 ノーフォール・マッチの残酷「俺は仲間の腕を折ってしまった!」
前田日明×アンドレ・ザ・ジャイアント→86年4月29日 アンドレの“顔面エルボー”に前田の“皿蹴り”裏ビデオファン垂涎のセメントマッチ
ジャイアント馬場×スタン・ハンセン→82年2月14日 馬場の選んだ最後の恋人
猪木、坂口組×テーズ、ゴッチ組→73年10月14日 神様ゴッチは変人だった
アントニオ猪木×ハルク・ホーガン→84年6月14日 「金返せ」の大合唱、猪木の復讐劇になぜ長州は乱入したのか?
アントニオ猪木×ビル・ロビンソン→75年12月11日 高田延彦×ゲーリー・オブライト→92年9月21日 〈レスラーが見た名勝負〉ダニー・ホッジの涙、「プロレスがここに生きていた!」
アントニオ猪木組×ブルーザー・ブロディ→85年4月18日 ブルーザー・ブロディ×ランボー・サクラダ→85年10月18日 超獣ブロディの“場外パイルドライバー”と“右膝の流血”は何を訴えたのか!?
タイトルに「!」が多いのはしょうがないね、そういう世界なんだから。
やっぱ私がいちばん好きなのは、前田とアンドレの試合の話。映像観たことないんだけど、死ぬまでに一度は観てみたい。
異様な展開のなかで15分経過したとこで、「いっていいんですか!? え!? いいんですか!?」と言ってキレた前田が喧嘩用の蹴りを出すってところは読んでるだけでゾクゾクする。
新日が、いうこときかない前田を制裁するためにアンドレつかったってことらしいが、「そんなアンドレに逆らったのは、世界で俺が初めてだったそうなんだよ」と前田が語るのも伝説の一部に含まれる。
大きな章立ては以下のとおり。
PART 1 革命の伝説
PART 2 90年代の万華鏡
PART 3 セメント&シュート
PART 4 神話の時代
PART 5 闘いの記念碑