皆さん、こんにちは。14期生の中川です。
本日は最近の政治の話題である、戦後70周年の談話に因み、そもそも明治以降の日本の戦争は何だったのかを体系立てて考えるのに参考になる書籍を紹介したいと思います。先週のブログで北方謙氏が取り上げている「失敗の本質」は、日本軍隊の組織的失敗に焦点を当てた名著ですが、今回紹介したいのは、「それでも日本人は戦争を選んだ」という書籍です。
https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784255004853
本書は2009年7月初版、現在26刷発行のベストセラーのようですが、小職は今回初めて読み、深く感動しました。
本書は、明治維新以降の日本の近代史を、日清、日露、第一次大戦、満州事変から日中戦争、そして太平洋戦争までの戦争をテーマにして、それぞれの戦争の時代背景、国民・政府・天皇・軍部の想い、客観的な国際情勢、諸外国の動き・見解、そして戦争につながった意思決定の過程を客観的に追うことが出来ます。
特に感動した点は、各戦争について、戦争が起こった客観的事由や、時代背景から、戦争が日本に与えた影響までを、当事者の言葉も交えながら記載、また適宜当時の領土の状況を手書きの地図を挿入している為、当時の日本の置かれた状況が頭の中で臨場感を持って蘇ると共に、近代日本の歴史に対する知的好奇心が満たされる点です。
例えば満州事変であれば、今まで日本史の教科書レベルでは、事変の発生年月、主要関係者、日中間の関係への悪影響、日中戦争の契機になった、等を新聞のテロップ程度しか記載がなかったのに対し、本書では、そもそも満州事変が起こった時代背景やその歴史的意味、主要関係者の動き、事変が日本や世界に与えた歴史的な意味等を鋭く、かつ体系的にとらえて記載されています。
まさに、“そうだったのか、満州事変!”という感じで合点がいきます。
またとかく切り離して取り上げられることの多い各戦争が、連続したプロセスで書かれており、日本だけでなく世界主要各国の動きや考え方も平易な表現で描かれている為、歴史を“点”ではなく、“面”として捉えられる点でも勉強になります。
ここ数年ずっと懸案となっている日韓間の“慰安婦問題”、日中間の“お詫び問題”について、一通りの内容を新聞等で理解しつつも、そもそも何故韓国や中国はそこまで歴史問題に拘泥するのかについて、我々日本人はなかなか理解出来ないし、現在の両国関係を有利にする為の駆け引き、と捉えている考え方が中心かと思います。
本書籍を読むことで、日本人と中国・韓国人の歴史に対する認識の違いの点も理解が深まると思います。
戦後70年を迎えるに当たり、“日本人は日清戦争から第二次世界大戦までの戦争をどう総括するのか”、それを踏まえ、現代を生きる我々は、”今後中国、韓国とどう向き合っていくのか、自衛隊の活動範囲はどうあるべきなのか”等の問題に対し、自分自身の思考や意見を整理し、また構築していく上で非常に良い本だと感じましたので、未読の方には、是非お薦めしたいと思います。
お付き合いいただき、有難うございました。