突然ですが、皆様は「昆虫食」(ENTOMOPHAGY:エントモファジー) をご存知でしょうか。
私の場合は、以前に現職の営業活動で東大農学部様に伺った際、
社会課題である将来の食糧難とその対策についてを見聞きする機会があり、
昆虫食を知るきっかけとなりました。
FAO(国際連合食糧農業機関)が2014年に論文を発表し、昆虫食が注目を集めました。
論文では、2050 年までに世界の人口が 100 億人を越え、食糧が現在の1.5-2.0倍必要になる、
その解決策として、栄養価の高い昆虫類の活用が考えられると記載されております。
以下の昆虫食の主な特徴とともに、相乗効果として、
飼育などの産業化による新たな雇用や収入を生むほか、
牛などの家畜より飼料が少なくて済み、温暖化ガスの排出量を減らせるとも記載されております。
<昆虫食の主な特徴>
1. 昆虫のたんぱく質含有量は牛の 7倍以上
2. 必要な餌は牛の 1/10 以下
3. 必要な水は牛の 1/50 以下
4. 排出するガスは牛の 1/11 以下
5. 必要な面積は牛の 1/8 以下
6. 必要労働時間は牛の 1/20 以下
他方、読むと今後が不安になる書籍
「2052 今後40年のグローバル予測」(著者:ヨルゲン・ランダース)でも
2052年の食料不足が記載されており、
また、昨年10月に公開された映画「ブレードランナー2049」では、
気候変動で食糧難となった2049年の世界が描かれております。
映画内で、食卓には動物性たんぱく質が豊富な幼虫が登場したりするなど、
社会課題である食糧難とその対策などが身近に感じられるようになってきました。
そのような中、ネットなどで近未来の食材を調べると、
「微細藻類」(ユーグレナ⇒ミドリムシ)、「ソイレント」(栄養機能食品の飲み物)、
「人口培養肉」など、様々な食材が生まれつつあるようですが、
個人的には、「昆虫食」は名称にインパクトがあり、興味をひかれました。
※尚、近未来の食材確保の「方法」としては、
LED照明を用いた室内農業や、
IoTやAI・ロボットなどを活用した農業のデジタルトランスフォーメーションなども
有効とされているようです。
さて、海外に目を向けると、
世界では少なくとも、20億人が約1,900種類の昆虫を食用にしているようです。
近隣国のタイでは、スーパーやコンビニでBBQ味のクリスピーな蚕(カイコ)が
手軽なスナックとして売られおります。
韓国では、これまでイナゴや蚕を食用としており、
今後、政府が積極的に昆虫食の研究や開発を支援する予定のようです。
アメリカでは、昆虫食ベンチャーであるアスパイア・フード・グループ社やエクソ社が、
きたる飢餓に向けての栄養補給源として、70%がタンパク質でできているコオロギを
極力感じさせないようにデザインした以下の商品の開発・販売をしています。
<アメリカで開発・販売されている昆虫食>
1.BBQ味やサワークリーム&オニオン味のコオロギスナック
2. 粉上にした昆虫を混ぜて栄養価を高めたパワー小麦粉
3. コオロギの粉末入りのプロテインバー
なお、余談ですが、昆虫食でネット検索をすると、
国連が推奨する10の食用昆虫なるものが出てきました。
<国連が推奨する10の食用昆虫>
1. タランチュラ
2. ミルワーム(ゴミムシダマシ)
3. カメムシ
4. シロアリ
5. イモムシ
6. バッタ(チャプリネス)
7. サソリ
8. ハチ
9. コオロギ
10. ゴキブリ
上記10のゴキブリはもちろんですが、各昆虫の写真を見ますと、
特に2の映像が衝撃的で、どうにも食べられそうにありません。
※さらに以下のようなサイトもありました。
・昆虫食の通販ショップ
・死ぬまでに食べたい美味な虫10!
一方、国内においても、海のない長野県では、古くから貴重なたんぱく源として
イナゴや蜂の子、ざざ虫などの虫を食してきた文化があります。
昆虫食文化を持つ長野県伊那市では、「大昆蟲食博」が5月7日まで開催されており、
昆虫の試食ができるイベントも開かれているようです。
是非みなさまも体験してみては如何でしょうか。
また、最近の昆虫食の事業化の動きとして、
「Future Insect Eating」や「ECOLOGGIE」というプロジェクトが、
コオロギの大量生産技術の確立と、昆虫食や養魚飼料としての普及を目指すとともに、
「MUSHI Kitchen」という昆虫食専門のキッチンとレストランを近々オープンする
などがあるようです。
同プロジェクトでは、昆虫食について、実店舗やブランディングなどの活動を通じて、
「知ってもらう」、「体験してもらう」(一口食べてもらう、調理してもらう)ことを拡大し、
エンターテイメントとしてではなく、健康食、未来食として社会に認知され、昆虫食の地位を上げ、
新たな食文化として定着をさせたい、という思いがあるようです。
尚、別の研究では、昆虫食は持続が不可能な食材であり、食糧難の抜本的な改善策とはならない、
との見方をするものもありました。
食品研究を行うデンマークの非営利組織が昆虫食についてをまとめた本の中で、
昆虫を大量生産すれば、餌である穀物なども大量に必要となり、その結果、
従来のタンパク源よりも持続可能性が高いとは言えなくなると主張しています。
まだ十分に試行錯誤がなされていない未知の分野だけに、
昆虫飼育の産業化などが進展した場合、
従来の生態系を破壊する、生産活動に必要となるエネルギーがこれまで以上に増加する
温暖化ガスの排出量が増えるなど、
環境への負荷やコストが高まってしまう、他の家畜と同様の持続可能性に留まるものと理解をしました。
よって、昆虫食については、
大規模な食糧供給源であり食糧難を救う救世主、といった極端な見方や過度な期待をするのではなく、
あくまで、タンパク質が豊富な食材の一つとして、
牛・豚・鳥・魚などといった分類に新たに「昆虫」が加わるというぐらいの見方が妥当かもしれません。
現在、飲食店の診断実習をさせて頂いておりますが、
将来の飲食店の診断において、昆虫食のメニューを目にする時代が来るかもしれません、
と無理やりまとめ、締めくくらせて頂きます。
気持ち良くない話に最後までお付き合い頂き、有難うございました。