17期生 設楽です。
前々回の投稿で「診断士になる前は読書会を主宰していた」と書きましたので、今回は本領発揮(?)すべく、最近読んだ本の中から「起業の科学」を紹介することにします。黄色い表紙がまぶしく、本屋さんにいくとそのインパクトの強さで非常に目立ちます。
紹介する理由は単純で、(診断士であるなしにかかわらず)周りの方に奨めたところ評判がよかったことと、面白い上に勉強になったからです。加えて、Amazonで17週連続で経営書売り上げランキング1位(2/11現在)になっているというのもあります。
この本の凄いところは、とにかく「(ベースとなっている)スライドが緻密で完成度が高い」ことと「事例として挙げられている企業の行動が具体的に書かれている」ことにつきます。
著者の田所氏いわく、「スタートアップの多くが、ファイナンス、資金調達、資本政策、投資交渉の知見がないために失敗する。」とのことで、そのリスクを(なくすことは出来ないけれども)低減することは出来る、そのために書いたそうです。
内容ですが、スタートアップが起業した時点からスケール(市場拡大)に至るまでを時系列に沿って書かれています。目次は、
第1章 IDEA VERIFICATION(アイデアの検証)
第2章 CUSTOMER PROBLEM FIT(課題の質を上げる)
第3章 PROBLEM SOLUTION FIT(ソリューションの検証)
第4章 PRODUCT MARKET FIT(人が欲しがるものを作る)
第5章 TRANSITION TO SCALE(スケールするための変革)
となっていますが、分量的には第1章だけで1/3を占めており、やはりスタートアップは最初が肝心であるということを感じました。
ただ、診断士の視点で見ると、創業支援の場で(この本に書かれている内容を)当てはめることが出来るかというと、必ずしもそうではないというのが私の感想です。というのは、スタートアップというのは起業の中でもごく僅かなケースについてのみ当てはまるもので、それ以外の起業は「スモールビジネス」に分類されます。いままで世の中になかった(市場が存在しない、もしく存在するかどうかがわからない)ものに製品をローンチする、これがスタートアップの定義ということです。すなわち、多くの起業は市場は既に存在することが前提になっており、それらは(スタートアップではなく)スモールビジネスであるという点を学びました。第1章に更に細かい説明がありますので、読まれる方はご参照ください。。
ということもあり、各章で多くのフレームワークが提供されていることもこの本の魅力なのですが、診断実務の場で使えるかというとそれも違うと感じました。ただもちろんですが、一部は使えます。具体的には、PEST分析、顧客生涯価値向上、顧客獲得コストの低減、などが該当します。大変勉強になりました。
ただ、診断士の業務に直結するかしないかはともかく、この本の面白さはあくまでも数多くのスタートアップ企業が実例として挙げられているところです。あまり多くのことを書くとネタバレになるので控え目にしますが、「グルーポンは創業当初はクーポンを共同購入するというビジネスモデルではなかった」「インスタグラムは写真共有ではなく位置共有がメインのビジネスモデルだった」など、「おおっ、これは知らなかった!」と思うところがいくつもあり、とにかく読み手を飽きさせません。
それからこの本で最も共感したのは「自分が考え出したアイデア、ソリューションが人生を賭けてまでやる価値があるのかどうか?」という問いかけでした。私は(ステレオタイプ的に)起業というと「生きるか死ぬか」というイメージがあるのですが、起業(スタートアップ)というのは(生死はともかく)人生を賭けないとできないものだと改めて認識しました。
なお、この本については通常とは違う読み方をお奨めします。実はベースとなっているスライドの2018年版が1月8日にローンチされており、本を購入した人は無料で入手できます(期間限定)。詳細はこちらのリンクをご参照願います。
本の中では(紙面の関係上)スライドの全てが紹介されているわけではないので、スライドと本を照らし合わせながら相互補完をするとより深く内容が理解できます。本を読み、ページが進んだら該当するスライドも進めていく。一見面倒な読み方だと受け止められそうですが、実際やってみると面白かったです。
以上です。というわけで、稼プロ!ブログで初めて本の紹介をさせていただきました。前にやっていた読書会と違い、ネタバレをどこまでしていいかのさじ加減が難しいと感じました。読書会では、周りの雰囲気によってどこまで話すかをコントロールしていたのですが、ブログだとそれが出来ないので難易度が高いです。このあたりは場数を重ねたいというのもあるので、卒塾までにもう1回本の紹介をやってみたいと思っています。
最後に、本の紹介とは違う話になりますが、昨日とある記事の入稿をいたしました。この記事では私がとりまとめ役を担っており、正月明けから短期間で取材から執筆・校正まで一気に駆け抜けました。大草さんが当ブログ(執筆時,終了時)で書かれていたような完成度の高い記事に出来たかどうかはともかく、私および執筆メンバーの持てる力を出し尽くしたことが読者に伝わることを願っています。
設楽英彦