22期生の塩谷です。
前回のブログで県の林業研修に受講できることになったら、その内容を記事にしますと書きましたが、無事通学できることになりましたので、本日はその話題にしたいと思います。
受講期間は7月下旬から12月2週目まで全ての土日と結構な長丁場です。自宅から研修が行われる山間部までは電車で片道2時間半という遠地ですが、新しいことを学べるのは面白く、どきどき、わくわくでもあります。
まずは座学があり、現在の林業の現状や労働災害が多いといったことを何日かかけて学んだあと、測量業務を行いました。コンパスや測量器を持って山の中を歩き回りました。老眼の私には厳しかった…、ちょっとした読み違いで全く違うものになってしまいます。それを8月の暑い日に肌を出さないようにして行うので滝のような汗も流れ、塩を舐めながら水を飲んでいないと本当に熱中症で倒れてしまいます。また方位角、高低角、斜距離から高校生以来のsin 、cosを使って水平距離を出し、緯距、経距…倍横距、最後に倍面積を算出します。街中で測量している人を見たことはありますがこんなことやっているのだと改めて知りました。チェーンソーの実技も始まりました。チェーンソーは怖いの怖くないの、こちらは経験しなくても良いと感じつつ、既に丸太を何本か切りました。
先にも書きましたが、林業は本当に事故の多い業種です。1年間の労働者1000人当たりに発生した死傷者数の割合を示す「年千人率」は、ダントツトップの23.5、全産業の平均2.3の10倍(令和4年度実績)です。死亡災害は28人(同左)ですが、死亡事故の半分は伐木作業中です。ちゃんとした技術がないと木が予測していない方に倒れたりするのですが、木は相当重いので上に倒れてくるだけで大けがです。重さに生木による“しなり”などが加わると周囲にいる人はひとたまりもありません。因みに、死亡災害28人は労働者の分だけであって一人親方など労働者以外の分も加えると年間40名も亡くなっています。
なぜ、このような現実があるのかといえば、機械化が進んでいないとか、昔からの職人さんがちゃんとルールを守っていないとか、あるいは新しく入った人にちゃんと教えていないからなど、様々な理由があります。でも、それらを引き起こす本質的な問題は、木の値段が安すぎて信じられないほどの量を捌かないと商売にならないからだと思います。1本あたりの単価が安いのでできるだけ多くの木を切らなければならず、安全対策よりも効率性を優先する。あるいは、大きな設備投資ができないので人力に頼るなど。この辺りは、業界の方が読んだら、ご意見をいただきそうなところだと思いますが、私がお伝えしたいのは、これまで殆どの人が目を向けてこなかったこの業界に出来るだけ多くの外部の目を集めないと、大きく変われないのではないかということです。
先日、日経新聞に農業の6次産業化の売上が2兆円を超え、10年前に比べ20%増えたとありました。様々な業種の人や地域が取り組んでいった結果ですが、それでも一朝一夕に成し遂げたものではありません。林業においても同様です。木をそのまま市場に売っていたら安いままですが、他の業種の人と連携し新たな付加価値を加えるなど、林業の6次産業化が必要なのではないでしょうか。私自身に今はまだ大したアイデアはありません。ただ、毎年40人前後の人が亡くなる業界が変わるためには、業界の常識を変える多くの人たちの関与が必要だと思います。
そんな林業ですが、明るい話題もあります。林野庁によると、就業者の若年者率(35歳未満の割合)は、全産業が平成2年の30%強から令和2年(2020年)までに10%程度減少したのに対し、林業は平成2年(1990年)以降増加傾向にあり、令和2年(2020年)には平成2年のほぼ倍の17%までになったとのことです。林業の経営者や親方はこれらの若い働き手を怪我させることなく、そして、希望のある将来にできるように変化していくことを期待したいと思いますし、私もそんな支援ができるようになりたいと思います。本日も最後までお読みいただきありがとうございました。