こんにちは。22期の常木です。2022年もあと1日半。やり残したことはありませんか。1日半でできることは相当限られてはいますが・・・。
今年最後のブログということで、少し硬派な内容で締めたいと思います。皆さんはFP&Aという仕事をご存じでしょうか。Financial Planning & Analysisの略語なのですが、事例IVを地でいく仕事です。ビジネスに非常に近いファイナンスなので、FP&A Director/ManagerはCFOへの登竜門となっている会社も多いです。
大学を出て入った会社で、商学部卒ということだけで経理部経理課に配属になったのが運の尽き。それから40代半ばまでは、ひたすらにファイナンス畑を歩んできたのですが、私のキャリアの中心は常にこのFP&Aでした。FP&A業務は多岐にわたり、年次の予算策定、実績数値の分析、予測などが定例業務として含まれるのですが、私が燃えたのはプロジェクト意思決定分析でした。
手順としては、
①いくつかのシナリオを主担当部署と考案し、
②各シナリオについてNPV(Net Present Value)とROR(Rate of Return)を算出、定量比較をし、
③どの要素が数値を動かすKey Driverになっているかを探り、その不確実性(UncertaintyともRiskともいう)を最小限にするための定性分析をし、
④更に、Non-Financial Factorがあれば、そこも言及する。
例えば、世界的に有名なポテトチップスをアジア全域に販売するためにはどの工場で生産すべきかというお題が与えられます。Product Supply部門の担当幹部と当時考えたシナリオとしては、①アメリカの既存工場のラインを拡張、②市場に近いアジアで他の製品を作っている工場を拡張、更には③アジアにポテトチップス専用工場を新設する等でした。まずは、それぞれのシナリオにおける一時費用と継続費用を一つずつ計算に入れます。その中で、現地でジャガイモを調達するケースが考えられ、その調達価格の考察もしました。他にはその国の人件費と将来に渡る上昇リスク、最終製品の輸送コスト、関税や特恵関税、為替変動リスク、各国の市場規模推移なども大きな要素です。
一方で定性分析の要素としては、ジャガイモを始めとした原材料を現地調達するとしたら安定供給ができるか、政治的リスク、ストライキなどの労務リスクはあるか等が考えられました。これはそれぞれ仮説を立てて、記事や資料から情報を集めていく作業を伴います。
FP&Aの担当する分析は財務分析を超えたビジネス分析なので、視座を高く持って、更には未来を見通しながら分析を構築していく面白さがあります。アウトプットはNPV/RORの結果だけでは不十分で、リスク分析、時には感応分析も行いました。例えば、ジャガイモの価格が5%上がった際には、NPVへのインパクトがUS$○○MMといった感じです。プロジェクトによっては、壮大な樹形図(Decision Tree)を書いて、その全ての枝(シナリオ)のNPVを計算し、更には定性分析もしたこともあります。
多くの会社を渡り歩く中で、この分析がしっかりできている会社は2社だけでした。NPV数字の大小は一目見れば分かります。議論すべきはその数値がどんな仮定(Assumptions)で出来上がっているのか、その仮定が納得感のあるものなのかという部分です。多くの会社の多くのファイナンス・マネジャーは計算だけして満足してしまっています。それらの数値を形作るAssumptionsがいかに文章で分かりやすく説明され、不確実性が分析され、リスクに備える手が準備されているかで、その人の分析力・洞察力が分かります。饒舌に文章で説明が加えられていたら、最初のハードルはクリアということにしています。
こんな風に偉そうに書いていますが、この境地に達するまでどれだけ多くの失敗を重ねてきたことか。アメリカ人の中年オヤジにキッつい突っ込みを喰らい、どれだけ自分の考えの浅さに落ち込んできたかは、いくら書いても書ききれないです。そんな事が積み重なったキャリアを過ごしてきたので、1次試験の財務・経理は余裕の88点。2次試験事例IVも正解率低めのNPV問題をほぼ完ぺきに仕上げて、76点でクリアできたのだと思います。自慢していますね。年末なので、何卒ご容赦。
今回の例は大企業の例でしたが、ちょっとした事で業績が上下する中小企業では余計に、こういった定性・定量を反映したビジネス分析が必要となると思っています。
皆さま、良い年末年始をお過ごしください。
まさに事例Ⅳのスペシャリストという感じです。
社長のドタ勘経営に頼った中小企業に対して展開できると素晴らしいと思います。
自慢、いいと思います。
この自慢は診断士試験受けた人間でないとすごさがわかりませんから(笑)