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企業と人権

2020-07-10 12:00:00 | 19期生のブログリレー

みなさん、こんにちは。19期の西山です。個人的には最後のブログ投稿となり、何を書こうか悩みましたが、これまで通り直近の話題から関心のあるテーマを書こうと思います。

 

以前、このブログでパンデミックと人権リスクについて書きました。コロナ禍で企業と従業員の関係に変化が起きています。具体的には、従業員に対する安全配慮義務やテレワークなどの新しい働き方のように、企業が注意しなければならないことが増えました。

 

そんな中、米国発の大きな人権問題=BLM(Black Lives Matter)が世界に広がっています。黒人男性が白人警察官に足で首を絞められ亡くなった事件をきっかけに、黒人だけでなく様々な差別や格差問題が噴出しており、収束の兆しは見えません。人種などにもとづく差別や格差は古くからある問題ですが、今回がこれまでと違うのは普段、政治や社会問題と距離を置きがちな企業が態度表明や事業戦略の修正を求められている点です。

 

たとえば、人種差別問題への意識や取り組みが弱いとして、スターバックスなどの大手企業が相次いでフェイスブックから広告を引き揚げています。米プロフットボールリーグ(NFL)のワシントン・レッドスキンズは、先住民のネイティブ・アメリカンを示す「赤い肌」というチーム名を見直すと発表しました。ユニリーバはスキンケア製品における“ホワイト”や“ホワイトニング”、“フェア”といった名称の使用を廃止すると決め、ロレアルやジョンソン・エンド・ジョンソンが追随するなど、化粧品業界全体に広がりを見せています。

 

翻って日本企業はどうでしょうか。たとえば、資生堂や花王など国内化粧品メーカーが「美白」表現をやめるという話は聞こえてきません。全般的にBLM運動に対するリスク意識は高まっていないように見えますが、LGBT運動の高まりなど社会の様々な面で少しずつ変化は起きていると感じます。特に20代を中心とするミレニアム世代やその下のZ世代は気候変動や人権問題などの社会課題にどの世代よりも敏感だと言われます。次の社会を担う若者の価値観が変化している以上、「面倒な問題には首を突っ込まず、黙々と稼いでいればいい」という姿勢は自社のステークホルダーから受け入れられなくなる恐れがあります。

 

日本でもESG投資という言葉が浸透しつつありますが、これまで日本企業はE(環境)とG(ガバナンス)への取り組みが中心だったと思います。しかしこれからはS(社会)にも向き合っていかないといけません。これは大企業だけでなく、中小企業も含めた社会全体の課題です。自社のサプライチェーン上で人権問題を引き起こしていないかチェックするなどの「守りのS」はもちろん、自社の活動を通じてよりフェアで生きやすい社会を創り出していく「攻めのS」にも目を向けていく必要があると思います。

 

 

 

 

 

 

 

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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (森(宏))
2020-07-11 11:42:35
西山さん
プロの見地からのお話ありがとうございます。
「これからはS(社会)にも向き合っていかないといけません。」というのは、企業の社会的存在の側面が増々大きくなっている中でその通りなんだろうなと思います。イメージの大事な企業にとっては正しい方向性なのでしょうね。
ただ、そうした行動を起こす企業を見ていて違和感を覚えることも結構あります。今回の広告出稿停止も、美白商品取扱い中止も、それが絶対的正義かと言うと首を傾げてしまうところもあります。わざわざ声には出さないけれど自分のように疑問に思う、いわゆるサイレントマジョリティ(マジョリティかどうかわかりませんが)をどう評価していくのかも大事だと思うのですが、どうしても声の大きいものへの対応が優先されてしまうのはなんだかなあと思う今日この頃です。
まあでも経営としては、そんな見えない声を重視するのはリスクがありますね。
レジ袋有料化なんかは「E」の話ですが、そうした愚策の最たる例だと、個人的には思います。
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Unknown (たけい)
2020-07-13 19:41:16
環境問題などは、若い世代のほうが活発かもしれないですね。(若い時にそういったことに触れている影響かもしれませんが)
これからの企業は、環境やガバナンス、守りのSと攻めのSのバランスやかじ取りが大切なのかも・・・・と感じました。
専門的なお話でとても勉強になりました。ありがとうございます。
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Unknown (廣瀬達也(19期生))
2020-07-14 20:56:29
西山さん
今回も切れのいい知見の投稿ありがとうございます。

環境問題などイメージが分かりやすく、ある意味ファッション的にも転嫁しやすい領域には企業としても入りやすいかもしれない気がします。

日本にも伝統的な人権問題があると思うのですが、この領域はなかなかにデリケート。日本で人権問題を取り上げようとするとこの辺りとの関係性考慮などが必要となるのかもしれません。
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Unknown (遠藤孔仁)
2020-07-16 10:42:00
西山さん
企業広報の観点から世界的なトレンドとどう向かうかの示唆に富んだブログありがとうございます。
日本では、三方良しの経営に言われるように、社会とともに栄える企業が多くあるように感じてます。
一方で、グローバリズムから、ナショナリズムを優先した覇権争いの影響を見極める冷静な視点も兼ね合わせ、企業の水先人ともいえる重要な役回りなのかなと考えています。
なかなかお話しする機会がありませんでしたが、西山さんの世界のトレンドについてのお話をお伺いする機会を持てたらと思います。
1年間ありがとうございました。
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Unknown (鴨志田)
2020-07-20 11:52:22
旬な話題、鋭い視点、いつも参考になるブログをありがとうございました。
今朝も、診断士の知人と、社会課題の解決につながる中小企業支援について話をしたところです。公的機関の支援は、市場ニーズ優先、もっと、社会課題の解決を意識する必要があると、私の知人は考えています。ESG投資、表面的でなく、本質を踏まえた取り組みを期待したいです。守りのSではなく、攻めのS、良いアドバイスに感謝いたします。私も意識していきたいと思います。
また、19期でのご縁をありがとうございました。
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