現存する江戸前握り鮨店の中で最も古いうちのひとつで、創業文久元年(1861)という「寿司政」。いつか行ってみたいとずっと思っていたが、やっと訪問することが出来た。昼時の暖簾が掛かってすぐの時間に到着。低く掲げてある暖簾をくぐる。店はこじんまりとしている。カウンターにテーブル席。どの椅子にもまっさらの白いカバーが掛かっていて清潔ですっきりとした空間。まだ口開けなので先客はなし。どちらでもどうぞ、ということでカウンターに腰を下ろした。
漬け場の中にはひとり。にこやかな方で一見でも緊張を強いられるような事は全くない。そして給仕の若い方がお茶を運んで来てくれた。平日の昼のみの「にぎり」を注文。さっそくひとつづつ握りが出てくる。まぐろ、平目、小肌など次々に口に入れていく。握りは端正な形で、煮切りが塗られて出てくる。飯の酢の効き具合はやや強めで、この店の特徴として有名な、強く酢締めした小鰭はしっかりと酢が舌にのってくる。これはこれで旨い。途中、椀が出て、煮烏賊や煮穴子などの煮たタネと薄く焼いて鞍掛けにした玉子、海苔(干瓢)巻きが出て終了。どれもしっかりと仕事のしてあるタネ。いやぁ、どれも旨かった。この内容でこの値段って素晴しい。平日のみらしいが文句なしの内容だ。この値段だったら誰でも気軽に試す事が出来るだろう。それで歴史も一緒に食べられるんだから、なんと贅沢な事か。まだまだ懐が深そうなので、もう少し値段の高いお決まりやお好みでも試してみたい。夜に訪れるチャンスは来るだろうか。
↓写真は「九段会館(旧軍人会館)
東京都千代田区九段南1-4-1
(すしまさ 九段下寿司政 くだんしたすしまさ)