神田神保町にある老舗酒場「兵六」。創業は昭和23年(1948)とのこと。以前から酒呑み向けのいろんな媒体で目にしていて、機会があればと思っていたが、場所も知らず、かなり狭い店だとは聞いていたので端からあきらめていた。神保町で宿泊先に帰る前に時間が空いたので、スマホで地図を検索してみると…、なぁんだ、よく通っている道じゃないか。喫茶「ラドリオ」や「ミロンガ・ヌオーバ」がある細い路地の端。そういえばあまり夜には通った事がなく、提灯が出ていないと店かどうかも分からないような建物だ。縄のれんが下がっていて、窓の奥から賑やかな声が聞こえてくる。少し店内の様子も分かったので、思い切って戸を開けてみた。
なるほど狭い店だ。コの字になったカウンターとテーブルが2つのみ。カウンターの奥に板場があるようだが、主人と思しき若い男性はカウンターの中の椅子に常駐。どうやっても動き回るのは難しいくらい狭いスペースだ。店内も一杯で、こりゃダメかなと諦めかけたら、主人がカウンターに捻じ込んでくれた。席を詰めて下さった方にお礼を言って腰をおろす。店内は電球の灯りで落ち着いた雰囲気。窓を開け放し、みな思い思いに酒を呑んでいる。圧倒的に男性が多く、年齢層はやはりやや高め。
まず年季の入った壁の大きな木札の品書きから「清酒」を冷や(常温)でもらい、つまみは紙短冊に書かれた中から「うどとしめさばのぬた」を注文。和風なものばかりと思いきや、餃子や炒麺があるのが面白い。こんな特殊な居酒屋だから、主人はよほどクセの強い人かと想像していたが、若くてとても腰の低い主人だった(三代目とのこと)。誰かが出ようとすると、一斉に立ち上がらなければならないが、皆とても協力的。主人とも、他の客とも近いので、自然とそういう団結が出来てくるんだろう。空いた席にはすぐに次の客が入って、運がよければ座れるが、そうでないとごめんなさい、という感じ。やはり人気があるなァ。壁に飾られたこの店にまつわる様々な写真や書を眺めながら、ゆっくり1合だけいただいた。
もう少し色々つまんでみたかったが、一日中歩いてヘトヘトに疲れたのと、座っている丸太のベンチがお尻に当たって辛かったので勘定をしてもらう。次は何も予定がない時にゆっくりしてみたいな。(勘定は¥1,500程)
↓ 意外にも「御茶ノ水駅」は昭和7年(1932)建造の近代建築。構造と立地の問題で、電車を走らせたままの建て替え工事が困難なのだそうだ。
兵六 (ひょうろく)
東京都千代田区神田神保町1-3
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