創業安政4年(1857)という長い歴史を持つ和菓子屋「菊屋茂富」へ。店は東海道41番目の宿場町、鳴海宿の街道沿い、ちょうどクランクになった所にある(←「曲尺之手(かねのて)」と呼ぶらしい)。裏手に駐車場があることを知らなかったので少し離れたコインパーキングに車を停め、雨の中傘をさして店に向かった。この店の建物は昭和元年(1929)に建てられ、名古屋市の「登録地域建造物資産」にも指定されている。店内はガラス・ショーケースの中に様々な菓子が並ぶ。出ていらした主人にお願いしたのは上生菓子の「もみじ」「秋錦」「菊」「おみなえし」(訪問11月)、それに「ふくさやき」と「利休饅頭」、干菓子の「鳴海潟」。女将さんも出ていらして包んでもらい、家に持ち帰った。
帰ってすぐ抹茶を点てて妻と分けて上生菓子からいただく。「もみじ」は葉の形をしていて中にこし餡が。ほろほろと崩れるような食感が旨い。「秋錦」は緑、黄、柿、赤という色の練り切りのグラデーションが美しい。中にはこし餡。「菊」は薄紫色のもち米の皮。少しニッキのような風味もあって中にこちらもこし餡。これが何で菊なんだろう。「おみなえし」は花の色を思わせる薄い黄色でほろほろとした口当たりの皮。これも中はこし餡。「ふくさやき」はどら焼のような生地を四角く畳んでつぶ餡を包んである。川には”東海道”と焼き印が入っている。こちらの代表的な菓子だという「利休饅頭」は丸い形で、きれいな艶のある黒糖羊羹でこし餡が包んである。含むと黒糖の風味と甘さが口に拡がって旨い。「鳴海潟」は波と千鳥を描いた干菓子。干菓子はどれも同じような風味かと思いきや、こちらのはとても口溶け良く、妻も特に気に入ったそう。やっぱり違いはあるんだなァ。まだまだ色々な菓子が並んでいたので、次は違う菓子を選んでみよう。(勘定は¥1,600程)
↓ 店と道路を挟んだ隣にある土蔵のある家(建築詳細不明)◇。後方には風情ある板塀も見えるが広い敷地内の全貌は分からない。かつては街道側に商店が並んでいたようだ。
↓ 街道沿いで気になった建物(建築詳細不明)◇。日本家屋の敷地内に門を挟んで下見板張りの洋風な建物が隣接している。かなり軒天が深い。
和菓子司 菊屋茂富
愛知県名古屋市緑区鳴海町相原町28
( 名古屋 なごや なるみ なるみじゅく 鳴海宿 東海道 和菓子 御菓子司 きくやしげとみ 女郎花 登録地域建造物資産 近代建築 )
よくあることですが、拝読していてひっくり返りそうになりました。
>>「ふくさやき」はどら焼のような生地を~ ”東海道”と焼き印が入っている
これはおそらく街道の「東海道」から取ったのでしょう。
…が。 一般的には「回転焼き」「大判焼き」と呼ばれるモノは、名古屋市内の一部では昭和30~40年頃は
「東海道」という名称で売られていましたよね(今でも一部スーパー内テナントではあるらしい)。
なぜこんな名称を付けたのか判らなかったのですが、ひょっとしたらこちらのお店が先なのかも?
このお店から「ファンシー」みたいに改名して広がった? 歴史ロマンですね。
>東海道
ちょっと調べてみたらヤマナカが姫路の「御座候」から技術を譲り受けて
「東海道」という名前で昭和30年代から売っているようですね。
自分は知りませんでした(近くにヤマナカが無い)。
でもこういう食べ物にまつわる名前や歴史も興味深いですね。