ハリーの「聴いて食べて呑んで」

日々増殖を続ける音源や、訪問した店、訪れた近代建築などの備忘録

米久本店 @東京・浅草

2015年02月07日 | 東京都(老舗)

浅草のひさご通りにある老舗牛鍋店「米久本店」。創業は明治19年(1886)というから日本でも屈指の歴史を誇る牛鍋(すき焼き)屋だろう。アーケード街にあるので屋根は見えないが、提灯がぶら下がっている建屋は独特。入口はガラス引戸になっていて、中に入ると下足札を渡され、上り框に用意された太鼓が「ドーンッ」と1発打ち鳴らされる。客の人数によって数が違うようで、来店を店内に知らせる儀式のようだ。面白い。入ってすぐ目に入るのが階段。説明がしづらいが、飴色に艶光りしている木製の階段は螺旋状に上にあがったところで左右に分かれており、その下あたりに厨房が位置しているという複雑な造り。凝ってるなァ。まるで某有名アニメ「千と~」に出てくるような不思議な雰囲気。案内を待つ間に、厨房の中から女将らしき女性が若い店員に厳しく指導をしている声が漏れ聞こえてきた。老舗の看板を守るのは大変だろうが、こうして伝統が守られていくのだろう。

1階の入れ込みの広間に案内されて、コンロが用意してある座敷に腰を落ち着けた。給仕がピンク色のポロシャツを着た若い子ばかりだったのは意外。品書きを見て「上の牛鍋」とお酒(桜正宗)を注文。こちらでは関西風の「すき焼き」という呼び名ではなく、あくまで「牛鍋」です。先にお酒とお通し(牛佃煮)が運ばれる。弱った…1本では足りなくなってしまう(笑)。しばらくしてあらかじめ用意されていた浅い鉄鍋に肉とザクが用意され、給仕の男の子が準備をしてくれる。最初だけは手伝ってくれるようだ。肉は少し高い「トク」というのも用意されているが、この「上」でも充分な肉質。自分はむしろこれ以上サシが多いと好みではなくなってしまう。まだ赤い所が残る位の煮えばなの肉を、溶いた玉子に浸して口に放り込む。旨いっ。至福の時間です。この空間で、昔の人も同じ味の牛鍋を味わったのだろうかと思いを馳せながら、鍋を突つき、酒を呑むのはとても気分がいいもの。これ、テーブル席で食べたら魅力がかなり減少するような気がする。

建物に興味があるので、古い建物を維持する老舗では、用が無くてもなるべくお手洗いを借りるようにしている。すると店の造りもよく分かるし、道すがら思わぬ所から箱庭が見えたり、見えない所にもしっかり手が回っている老舗の矜持みたいなものを感じ取ることが出来て楽しい。こちらの手洗いの古い木戸は何と自動ドアだった!(←いいような、悪いような・笑)。(勘定は¥3,700程)

 ↓ 浅草寺の右横にある重要文化材「浅草神社」。基は浅草寺と一体だったとは知らなかった。右は境内で行われていた猿回し。

 

米久本店

東京都台東区浅草2-17-10

(米久 よねきゅう よねきゅうほんてん 牛なべ ぎゅうなべ すき焼き スキヤキ)

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福丸 (2) @岐阜県岐阜市 (※移転)

2015年02月07日 | 岐阜県(岐阜)

雪がちらつく岐阜市の美殿町。「田毎」でにこみを食べた後は、食後の甘味。には行列に並ばないと、かき氷にも、鯛焼きにもありつくことが出来ない「福丸」も、さすがに客の数はまばら。暖簾をくぐって、鯛焼きを注文した。先客の為に鯛焼きを焼いていた主人。「すぐお食べになりますか?」と訊かれたので「ハイ」と答えると、焼きたてを出すから少し待って欲しいとの事。1本焼きの焼き型に生地と餡子を流し込み、ガスバーナーの上にくべる。量産が出来ない効率の悪い方法で、売上にも影響するだろうと思うが、客にとってはなんだか特別感がありうれしい。

しばらくして丁寧に焼きあがりを渡される。小振りな鯛焼きは薄皮で、パリッとした食感が特徴。丁寧な割に、意外と焼きムラはあれど、香ばしく、旨い。前回食べたのはまだ暑い頃だったので、やっぱり寒い時に食べると格別。いつも、これならいくつでも食べられると思うのだが、こういうものはもっと欲しいと思うくらいでいいのかも。歩きながら口の中を熱々の餡に弄ばれつつ、あっという間にお腹の中へ。並ぶのが嫌で、まだ数度しか買った事がないのだが、並ぶ必要がないのなら今度は家族にも買って帰ろう。店の中のポップには持ち帰りの「どて煮込み」の文字が…。気になるなァ。(勘定は¥100/個)

前回の記事はこちら

この後の記事はこちら

福丸 (ふくまる)

岐阜県岐阜市美殿町49

(薄皮のたい焼き福丸 薄皮鯛焼き うす皮鯛焼き 薄皮たいやき 美殿町商店街 美殿町 みとのまち 鯛焼き かき氷 福丸)

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ミロンガ・ヌオーバ @東京・神田神保町

2015年02月06日 | 東京都(老舗)

神田神保町の古書店街をひと廻りして脇に入ると、短いけれど胸がワクワクする路地がある。本探しがひと段落した人達の憩いの場といえば喫茶店だが、この路地にはとびきりの歴史がある店が2軒。以前は「ラドリオ」に伺ったが、今回はその斜め向かいにある「ミロンガ・ヌオーバ」を訪問。創業は昭和28年(1935)という老舗で、ラドリオと同様に、煉瓦造りの外観は雰囲気たっぷり。路地に溶け込んで、これ以上ないような特別な一画になっている。店に入ると、長い年月を経てきた店にしか持ち得ない落ち着いた雰囲気と照明で、古くてもしっかり手入れされていることが分かる。入って左にある大きいテーブルの席に腰を下ろし、メニューを眺める。喉が渇いていたので爽やかな口当たりのものをとドイツのレーベンブロイを注文。看板にある通り、こちらは珈琲だけでなく、世界のビールを数多く揃えているのだ。

ラドリオがシャンソンなのに対して、こちらはアルゼンチン・タンゴが流れている。そんなそれぞれのこだわりが面白い。店内には本を拡げている人も何人か。きっと古書店で手に入れた戦利品を見返しているんだろう。きっと一番楽しい時間だろうなァ。自分は本こそ手に入れていなかったが、その前に中古CD屋で手に入れたCDを手に取って何するでもなく眺める。そんな何もしない時間が楽しい。スキっとした口当たりのレーベンブロイはあっという間に喉を通り過ぎた。わざわざ出向くまでもないが、こういう店がいくつも隠れているのが神保町の魅力。コーヒー・チェーン店もいいけれど、こんな店があることを知っていてわざわざ行こうとは思わない。(勘定は¥600)

 ↓ ミロンガ・ヌオーバのコースター

ミロンガ・ヌオーバ

東京都千代田区神田神保町1-3

(神保町 ミロンガ ヌオーバ ヌォーバ)

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With A Little Help From My Friends / Joe Cocker

2015年02月05日 | クラシック・ロック

With A Little Help From My Friends / Joe Cocker (1969)

このアルバムのリマスター盤CDを購入したのが12月の初め。この頃のジョー・コッカーは演奏の面々も強者揃いだし、聴き応えがあるなぁと何度も繰り返し聴いていた。そして12月23日の朝もたまたま聴いてから出かけ、家に帰ってきてから訃報を目の当たりにする。「えーっ、朝聴いて出たばっかりなのに…」。

ジョー・コッカーが好きになったのは何がきっかけだったろう。もちろん映画「ウッドストック」での熱演はビデオ(VHS)で見ていたし、ブルース・ブラザーズ(The Blues Brothers)が好きだったので、ジョン・ベルーシ(John Belushi)が米お笑い番組「サタデイ・ナイト・ライヴ(Saturday Night Live)」でやったパロディ共演のビデオも見た覚えがある。ただジョー・コッカー自身にはさほどのめり込まず、周辺のアーティスト、レオン・ラッセル(Leon Russell)、ジェシ・エド・デイヴィス(Jesse Ed Davis)、デラニー&ボニー(Delaney & Bonnie)、デレク&ドミノス(Derek & The Dominos)らを聴くようになってからやっと聴きだした程度だった。その後、マッド・ドッグス&イングリッシュメン(Mad Dogs & Englishmen)のグル―ヴィーなノリが大好きになり、今に至るという感じだ。これら英米のアーティストの音楽を「スワンプ・ロック」なんて総称する事もあるが、明確なジャンルではないので(そもそも”スワンプ”は米国南部の湿地帯を指すし…)分かりにくい。でもこの辺の音楽を聴いている人には何となく雰囲気とかテイストは分かるものだ(と思う)。

ウッドストックでも熱演したビートルズ(The Beatles)のカヴァー表題曲を始めとして、このアルバムのほとんどの曲がカヴァーで占められているが、どれも彼のアクの強いヴォーカルによって、しっかりジョー・コッカー色に染まっている。やはり稀代のヴォーカリストと言うべきだろう。ミキシング・エンジニアがあのトニー・ヴィスコンティ(Tony Visconti)だったとはこのCDを買うまで全然知らなかった(デイヴィッド・ボウイのプロデューサーとして有名、しかもメリー・ホプキンと結婚していたとは!)。内容としては特に統一されたものはないのに不思議なまとまりがある、まさに当時の彼周辺の音楽環境をそのまま物語るような内容。素晴しい。合掌。

amazonにて購入(¥856)

  • CD (1999/10/5)
  • Disc: 1
  • Format: Extra tracks, Original recording remastered, Import
  • Label: Interscope Records

 

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吉野鮨本店 (3) @東京・日本橋

2015年02月04日 | 東京都(老舗)

東京でまっとうな鮨を食べたいと思ったらココ、日本橋の高島屋の裏にある「吉野鮨本店」。何度食べに行っても、しっかり満足させてくれる創業明治12年(1879)の老舗。昼時に4枚のガラス引戸を開けて暖簾をくぐると、カウンター席がひとつだけ空いていたのですんなりと座る事が出来た。ただちょうど混み合う時間帯だったとみえて、まだ何も提供されていない客も多く、上階には大勢の客もいるようで、漬け場では大皿の盛りこみも用意されていて、握り手はフル回転といったところ。少々の待ちを覚悟して、おきまりの1人前を注文した。

気取るところのない店内は、テーブル席もしっかり埋まっていて、サラリーマン、子供連れ、若いカップル、高齢のご夫婦など老若男女が入り混じっていて、この店の使い勝手の良さを推し量ることが出来る。漬け場ではベテラン、五代目、若手達と4人が入って、丁々発止やりながら作業を進めていて、和やかな雰囲気で明るい。そんな光景を見ながらしばらく待っていた。そして「大変お待たせしました」の声とともに下駄にのった一人前のおきまりが置かれる。

ここの握りは小さ過ぎず、かといって食べにくいほど大きくもなく、バランスが良くて自分の好みにピッタリ。値段はこなれているが、タネの調子も良く、おきまりでも充分に満足出来るし、おきまりでも量・質共に値段を分けて選べるようになっているので、誰にとっても選びやすい。初めて東京の老舗鮨店で握りを、という人には真っ先におすすめ出来る。海老、穴子、薄焼きの玉子など、手の掛かったタネも楽しめる。この店独特の玉子は味わい深く、握りにはこの薄焼きスタイルが一番合っていると思うんだけどどうかなァ。他の店でもっと真似してもよさそうなもんだが。おきまりには入っていなかった光物(こはだ)を1貫だけ追加して勘定をしてもらった。(勘定は¥2,500程)

前回の記事はこちら

前々回の記事はこちら

 ↓ こちらに来る前に寄った人形町の刃物屋「うぶけや」。創業は天明3年(1783)というからすごい。

 ↓ 購入した爪切りと包み。パチンじゃなくストンと切れる。お店の人からは東京の古い店でもあまり聞かれなくなった「いらっしゃいまし」「ありがとうぞんじます」の声が

 

吉野鮨本店

東京都中央区日本橋3-8-11

(よしのすし よしのずし よしのずしほんてん よしのすしほんてん 吉野鮨 吉野寿司 うぶけや 産毛屋) 

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中華亭 峠店 @岐阜県土岐市 (※閉店)

2015年02月03日 | 岐阜県(東濃)

岐阜県多治見市と土岐市を結ぶ国道19号線沿いにある、以前から気になっていたラーメン屋「中華亭峠店」。本店は多治見市内にあるのだが、この店は店名通り峠道の途中にあって、かなり珍しい環境。何しろこの周囲には店も建物も他には全く見当たらない。ずっと前からこの場所にあると記憶しているが、現在片側2車線の国道は上り・下りで分けられているので土岐から多治見へ向かう方向でしか立ち寄る事が出来ない(たぶん)。ポツンと建っているので目立つのだが、いつもそう多く車が停まっている訳でもないし、写真にもある通り、看板が倒れていたりして雑然としているので入りづらく、二の足を踏んでいた。この日は最初から行こうと決めていたので、店前の国道側道まで来ると、何と何台も車が並んでいる。

暖簾をくぐって中に入ると店はカウンターのみ7席。ひとつを除いて満席の人気ぶりだった。全員男性だったのは当然か(ちょっと女性を連れていくような雰囲気ではないので…)。品書きは潔く「中華そば」と「ごはん」のみ。選択の余地はないので「そば」と一言で注文終わり。主人1人で切り盛りしているようだ。店内に置かれたテレビを眺めながら出来上りを待つ。しばらくしてカウンター越しに丼が渡された。薄切りの大きいチャーシュー、細いメンマ、小さく四角い海苔、蒲鉾が入ったこれぞ中華そばというスタイル。懐かしい黄色い麺は柔目で、少し甘味を感じるスープとともに期待を裏切らない味。旨い。今どきのラーメンとは方向が違うラーメンだが、独特な立地を含めて満足。(勘定は¥700)

本店の記事はこちら

※道路工事の影響で平成30年8月を以って閉店されたとのことです。

 

中華亭 峠店

岐阜県土岐市土岐津町土岐口1363

 

(土岐 中華亭 中華亭峠店 中華亭とうげ店 国道19号 多治見中華亭)

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並木藪蕎麦 (2) @東京・浅草

2015年02月02日 | 東京都(老舗)

建て替え前の並木藪蕎麦(創業大正2年・1913)には以前伺ったが、建て替え後はまだ一度も入った事がなかった。ちょうど浅草に居たので、並木通りまで出てみる。店の前には大きなスーツケースを抱えた人が2、3人。並ぶのは嫌だな、と思っていたら、すぐに引戸が開いて中から招き入れられた。よかった。建て替えを施工した建築屋のHPを見ていたので、分かってはいたが、建て替え前とほとんど変わらない店内の様子。震災後の耐震の問題で商業ビル化がすすむ東京の建築にあって、改めて老舗の矜持を感じさせてくれる建て替えの方法だ。素晴しい。ひとり客と見るや、以前と変わらず、さっと新聞を置いてくれる給仕のお姉さん達。混雑していても本当に居心地のいい店だ。

 ↓ 建て替え前の並木藪蕎麦(撮影:2010年)

夕飯時ではあったが、この後に予定も入っていたので、サラッと1枚だけ手繰ろうと、せいろを注文。ひっくり返したざるの上に拡げられた蕎麦、それにとびきり辛いつゆ。変わらない味を楽しんだ後に、蕎麦湯を少しいただいた。今回は壁に貼られた品書きの一番端に「そば味噌折」の文字を見つけていた。以前から頼んでみたいなァと思っていたのだが、お酒を頼んだ時にちょこっと付けてくれるそば味噌をお持たせとして販売しているのだった。どの位の量だとかは全然知らずにひとつお願いした。勘定の時に包んで下さったのは高さ10cmくらいの蓋付きの陶器の入れ物(写真下)にたっぷり入ったそば味噌。入れ物には「並木やぶ」の文字が(「ぶ」は変体仮名)。晩酌が楽しみ!(勘定は蕎麦¥750、おみや¥1,600)

以前の記事はこちら

並木藪蕎麦

東京都台東区雷門2-11-9 

(並木薮蕎麦 並木やぶ蕎麦 並木藪そば 並木藪そば 並木やぶ そば味噌折 蕎麦味噌折 おみや)

 

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Big Science / Laurie Anderson

2015年02月01日 | パンク・ニューウェーヴ

Big Science / Laurie Anderson (1982)

ローリー・アンダーソン(Laurie Anderson)のデビュー・アルバム。収録曲は実験的でシュール。いわゆるポップともロックとも全く違う音数少ない世界で、「パフォーミング・アート」と呼ぶのがふさわしいだろうか。ほとんどの曲でローリーは「語り」であり、いわゆる「歌」ではない。このアルバムからは「O Superman」というヒットが生まれている。この曲もヒット(イギリスで)したというのが信じられない変わった曲だ。彼女の曲で、自分が今まで唯一聴いた事があるもその曲だけで、米ライノのインダストリアル・ミュージックのコンピレーション盤「Industrial Strength Machine Music 」に入っていた。一度聴いたら頭から離れないインパクトのある曲だが、掘り下げるところまでは行き着かず、他にはアナログもCDも1枚も持っていなかった。82年というと、ポップからロックから、洋楽に興味を持ち始めた頃だから、むさぼるように色々聴いていたんだけれど、さすがに田舎の少年には彼女のような特殊なアーティストは引っ掛かってこなかったのだろう。

実は彼女、ルー・リード(Lou Reed)の晩年にパートナーとなったので、少し興味が出たのだった(結局結婚したはず)。アーティストとしての活動は知っていたが、まさかルーと一緒になるとは思わなかったので、その組み合わせにはかなりビックリしたなァ。

ブックオフにて購入(¥500)

  • CD (1995/2/16)
  • Disc: 1
  • Format: Import
  • Label: Warner Bros / Wea
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