10月3日付の東京新聞の記事です。記事のスクリーンショットの後にコピペをしています。
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ジャニー喜多川氏の性加害問題を見過ごしてきたメディアに批判が向けられています。問題を調査した外部専門家らは「マスメディアの沈黙」が被害拡大の一因となったと指摘しました。東京新聞がこの問題にどう向き合ってきたのか振り返ります。(編集局次長 飯田孝幸)
◆週刊文春が1999年に追及を開始、裁判に
喜多川氏による性加害は、週刊文春が1999年に連載で追及を始めました。喜多川氏側は名誉を傷つけられたとして文春側を提訴。一審は喜多川氏側が勝訴しましたが、東京高裁は2003年に性加害を認定。最高裁も喜多川氏側の上告を退けました。
本紙は週刊文春の報道後も、問題を正面から取り上げることはありませんでした。裁判の一、二審判決は掲載しましたが、二審判決の扱いは小さく最高裁の上告棄却は掲載していません。2019年7月に喜多川氏が死亡したときも、本紙は「所属タレントへのセクハラを報じられ、民事裁判で争った」と言及しただけです。
国内メディアの沈黙が続く中、英BBC放送が今年3月に喜多川氏の性加害問題を報じると、4月12日には元ジャニーズJr.のカウアン・オカモトさんが外国特派員協会で会見して被害を告白しました。
「SMILE-UP.」に社名変更 元Jr.ら12人の勇気ある告白 60年超の被害検証
本紙はカウアンさんの会見以降、性加害問題の報道を続けていますが、読者から「ジャニーズ事務所から恩恵を受けていた報道機関が忖度そんたくした」「(マスコミは)事務所怖さに看過してきたように見られる」という批判が届いています。
◆裁判担当記者たちは「全く覚えていない」
性加害を認定した高裁判決時に裁判取材に関わっていた本紙の複数の記者に聞くと、いずれも「全く覚えていない」という反応でした。私自身、最高裁決定時に裁判を扱う司法記者クラブにいましたが記憶にありません。
私たちは記事にすると何らかの不利益があるから書かなかったのではなく、「しょせん芸能界のスキャンダル」というような意識で軽視していました。だからこそ、記憶にも残らない話題だったのです。
芸能記者も「顔見知りの記者の携帯にしか出てくれない事務所なので、批判的な記事が出た後は取材がやりにくいだろうなという面倒くささは感じたが、不都合なことは書けないという意識はなかった」と忖度は否定しました。
◆「沈黙」した深刻さを反省します
しかし、忖度がなかったからといって免罪されるわけではありません。東京工業大の中島岳志教授はメディアや企業の態度は「『沈黙』から『雪崩』への手のひら返し」で「自らの責任を不問にした上で、新しい空気に便乗する行為」と批判します。
ジャニー喜多川元社長による性加害問題で、記者会見する(左から)井ノ原快彦さん、東山紀之さん、藤島ジュリー景子さん=9月7日、東京都千代田区で
中島岳志<論壇時評>
「沈黙」から「雪崩」への手のひら返し…ジャニーズ問題と空気 「全体主義的」こそ払拭を
「沈黙」の責任を考えてみます。多くのメディアの認識は「問題だと思ったが、不利益をこうむらないように取り上げなかった」か「たいした問題だとも思わなかった」に大別できるかもしれません。一見すると前者の方が悪質かもしれませんが、報道に携わる者としては問題とすら思わなかったことは深刻です。未成年者の性被害は「芸能界スキャンダル」ではなく人権の問題だからです。
「当時はそういう時代だった」という言葉が社内でも聞かれます。しかし、人々の意識が変わった今も、私たちはBBCが放送するまで報道しませんでした。その人権意識の低さを反省しなければなりません。反省なきままジャニーズ報道を続けることは、中島氏の言う「責任を不問にして、新しい空気に便乗する」ことです。
LGBTQ、女性の社会進出、障害者の権利、MeToo運動…。さまざまな問題は一部の人たちが勇気を出して声を上げ、メディアがその声を発信して、社会は変化してきました。
私たちは、弱い者の声、少数者の声を大切にする新聞でありたいと思っています。しかし、ジャニーズ問題ではそれができませんでした。このことを深く反省し、弱者に寄り添った報道を続けることを約束します。
お読みいただきありがとうございました。
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