岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

レッドソックスが岡島を獲得した理由

2008-02-04 19:18:57 | スポーツ(身体に魅せられて)
昨夜は、篤姫に続いて、NHKスペシャルを見てしまった。
「日本とアメリカ」シリーズの第3回だ。

この番組は観るまで、レッドソックスによる岡島獲得の理由を
知らなかった。
私など、野球ファンというわけではないので、あの岡島をなぜと
思ったものだ。多くの日本や米国の野球関係者も同じだろう。
松坂の話し相手と思っていたのではないだろうか。

しかし、話し相手程度の年俸でも、誰を話し相手にするか、
レッドソックスが考えないわけはない。

レッドソックスのヘンリーオーナーは、大資産家だ。
その富の源は、へッジファンドである。
先物商品取引で、天才と言われた男が、球団経営に乗りだしたのは
6年前である。それから、2度のワールドシリーズ制覇を成し遂げた。
昨年の優勝に貢献したのは、松坂以上に岡島ではなかったか。
評価は定まっているように思える。

先物商品取引は、商品価格を先取りして売買をする。
予測のビジネスだ。
経済、気候、政治などの予測や気づきをいかに指標にするかが
勝負の分かれ目といわれる。
この指標作りと分析では、レッドソックスは大リーグの中でも
抜きん出ているのではないか。

新たな指標をいくつか、公開している。
打者の価値を新たな指標で見る。他球団の評価の低い野手でも獲得する。
しかも安く獲得する。
他球団が、競わないのだから、安いのは当たり前だ。
オルティーズもしかり。
岡島は、松坂1億ドルに比べれば、20分の1くらいで手に入れたのだから、
松坂がヤンキースに行かないで、そこそこ勝利を上げてくれるのであれば、
足して2で割れるのだから、これは大成功となる。

ここで参考になるのは、「人と同じ基準では争わない」という姿勢だ。
そのためには、自らの指標を作る。
それも、勘や経験を第2列において、データのみで第一列をつくる。
どんな優秀なスカウトでも、世界の球団の全試合のデータを見ることはできない。

しかし、いまやデータを各国のデータ専門会社がつくっている。
そのデータを購入して、独自の加工をすることで、新たなランキングができる。
そのランキングが、一般データ(他球団)と異なれば異なるほど、価値がある。
非競争状態であれば、獲得は格安になる。
しかし、そのような選手だけでは戦えないことも確かだ。
スター選手の獲得も、他球団との競争の中では欠かせない。
松坂をヤンキースに行かせるわけにはいかないのだ。
もし、松坂がヤンキースに入れば、レッドソックスの連覇はなかっただろう。
我々はつい松坂の勝数だけでみて、トレードの評価をうんぬんするが、
それでは、メジャーは戦えないのだ。

と、ここまで書いてみて、なぜ、「たかが野球でここまでやるのか」と
思ってしまう。
純粋にビジネスと考えれば、大した規模のビジネスではない。
そこで、オーナーの野球への思いの深さに思い至るのではあるが。

さて、ヘンリーが球団経営をすることは、常勝チームをつくることであり
そのためにはできることはすべてしようとする。
これが、野球のグロバリゼーションにつながるわけだが、
この結果が、メジャーリーグになにをもたらすか。
そこまでは思い至らぬだろう。至っても思いは変わらないのか。

そして、世界の野球が、メジャーリーグに取り込まれ、駆逐されていくことに
なる。
各国に一流選手がいなくなる状況は、もう既に現実になりつつある。
なにしろ、メジャーリーグの平均年俸は日本の9倍に跳ね上がっているのだ。
選手はレベルの高いところで野球ができる上に、給与も数段いいとなっては
日本に留まることが選択肢になりようがない。

これは、他の分野でも同じである。人材流出は、グロバリゼーション化で
一層加速される。
しかし、助っ人はどこに行っても助っ人だ。
根ができる選手は限られている。同じ球団に長くいることはごく一部の選手を
除いて無理だ。
海を渡れば手にすることも多いが、失うこともこれまた多い。

日本の球団やそのファンの気持ちを察してみよう。
どの国の球団もメジャーリーグの2軍などになりたくない。
政治や経済でも同じだ。
オリンピックで、一時的に順位をつけるのはいいいだろう。
しかし、プロリーグに序列ができてはいけない。
あくまでもナショナルスポーツではないか。

市場主義にも原理が必要ではないか。

これはないものねだりか。

最新の画像もっと見る