岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

「介護保険2005年改正」の総括へ(13)

2007-12-28 23:38:13 | 地域包括支援センター
キーワード=造られた介護予防 そして軽度者という定義

「2005年改正」のキーワードは、介護予防であり、軽度者に
介護予防サービスを提供することで、重度化を防ぐ、ないしは
遅らせることを「2005年改正」の目的としたことに立法者を
含めて異論はないだろう。

「2005年改正」の説明資料には必ず以下の数字が掲載されていた。
要支援認定者は、要支援・要介護者の14.8%。
要介護1認定者は、要支援・要介護者の31.5%。
合わせて、46.3%(平成15年度)が軽度者である。
この軽度者の重度化を防ぐことが必要だ。
それが介護予防だという説明である。

ところで、軽度者という言葉をわれわれはいつから聞いたのだろう。
なぜ、要支援認定者だけが軽度者ではないのだろうか。

2000年介護保険法に、軽度者という言葉は出てこない。
改正介護保険法でも、軽度者という言葉の定義はない。

私は軽度者という言葉は、介護予防重視を打ち出すための
虚構の言葉と考えている。
軽度者が虚構なら、介護予防重視ということも虚構になるのではないか。

軽度者という言葉は「2005年改正」という机上の空論を繕うために、
新たに造った言葉だ。
検証していきたい。

まず、介護保険認定者の中に、比較的軽い方が多いことは事実だ。
軽度といえば、まず考えられるのは、要支援認定者である。
要支援認定者=軽度者が介護予防の対象者であるとすれば
とてもわかりやすい。

要支援認定者の介護予防強化でいいわけだが、
要支援認定者は、認定者全体の14.8%でしかない。

この数字では、予防効果も給付削減効果(もちろんこれが目的)も
現れない。ではと、次の要介護1認定者はどうだろうとみると、
なんと31.5%もいる。
この人々を含めて軽度者と呼べば、全体の半数近い人が、
介護予防対象者になる。
そうして、要介護1認定者は、むりやり要支援認定者に下げて、
軽度者という名をつけてしまった。
造られた軽度者である。当の新たな軽度者にはたまったものではないが。

1次判定(訪問調査と医師の意見書の機械的処理)の段階で、
要介護1と認定されたものはほとんど、2次判定では要支援1、2と
判定された。

数字のつじつま合わせから、この、「2005年改正」が始まっていると
思っていい。
「2005年改正」説明資料には、要支援・要介護者の人数割合は
いやというほど出てくるが、では給付額の比率はどうなのか。
書いてある説明資料をみたことがない。
徹底して、除かれている。もちろん作為的だと思う。

私は、予防給付にかかる費用がとても大きいものだと想像していた。
ゆえに、予防給付創設による給付制限効果が大きく出るのかと思っていた。
しかし、実際のデータはまったく違っていた。

平成18年度京都市の介護給付費の数字である。
給付総額343億39百万円に対して、予防給付費は11億44百万円
である。
3.3%にしかならない。
もっとも京都市は要支援認定者が2割に満たないという「反厚生労働省」
認定をしている市であるが。
それではと、京都府下(京都市を除く)のデータをみてみよう。
同じく平成18年度の集計。
給付総額251億3百万円に対して、予防給付費は12億30百万円である。
こちらでも、4.9%である。

給付費総額の5%に満たない要支援給付額をもって、介護予防重視という。
それを取り繕うように、地域支援事業として特定高齢者に給付費の
1.5~3%の事業費を使っていいという。
しかし、特定高齢者とて、机上の存在でしかないから、実際に事業を
始めたらそんな特定高齢者は存在しなかった。

都合の悪い数字は、徹底して隠すという厚生労働省。
そして、意図的な数字を丸呑みする保険者。

さて2年間たって、介護予防事業が効果があったのか。
私は「ない」と断言できる。

給付制限にしても、もともとサービスの利用の少ない要支援者を
いじめても大した削減になるはずはない。
この数字の実態を知らない私は、福祉用具の使用制限などで、
相当な給付抑制があったものと思い込んでいた。
ところが微々たる削減効果しかでていないことに驚いた。
あれだけ非難ごうごうの給付制限で獲たものはほんのわずかな効果
だけだったのだ。

これは被保険者である国民の悲劇ではないか。

参考:介改正護保険法案では、要支援者の定義を「要介護状態になるおそれ
のあるもの」から「介護予防に特に資する支援を要するもの」に変更。
現行の要介護1の人も認定時のスクリーニングで「要支援者」とする。
2005年2月11日閣議決定。
この時点で、初めて要介護1が軽度者と呼ばれ、要支援者に変更されること
になった。

明日から帰郷します。少しまとめて考えればと思っています。
来年こそよい年でありますように。


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