このチェルノフ監督の映画は、2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻開始直後20日間を現地で撮影した映像を元に制作されています。
映像自体は当時世界に発信され日本でもTVニュースで流されていました。
当時、撮影した場所がどこなのか明かすことはAP記者(撮影者)を危険にさらすことになり明確ではありませんでした。
その映像がどのように誰によって撮影されたのか そしてどこでどのように送信されたか、完全包囲されたマリウポリからどのように脱出できたのか明らかになります。
当時のTV映像は主に北部から首都に向かい停滞する車列の写していました。TVからは首都キウイへ向かう車列の映像などが流されていました。
しかし戦前の予想ではロシアがウクライナに侵入するとすれば真っ先にこの東部の街マリウポリだろうと言われていました。
各国報道クルーが多くいたことでしょう。
だがロシア軍の進軍により侵攻後、マリウポリに残るのは彼のクルーのみとなりました。
「戦争は暴発ではなく静寂から始まる」とは 映画冒頭のナレーションでの言葉です。
ロシア軍の街への進軍がわかると、町の車や子供たちの声など日常の音は途絶えてしまいました。
住民は何が起こるかと身構えているのです。やがて砲撃の音が近づいてきます。戦車のキャタピラの音も聞こえてきました。
人々の静寂の中に破壊は始まったのです。
私は阪神大震災の地震発生時、自宅の寝室から外へ投げ出された方に同じことを聞きました。
発生直後、「まったく音がしなくなった」と。そして普段は聞こえない遠くの踏切の音が聞こえてきた。
もちろん「電車などが通るはずがないのに」(全線不通)と。
予想外の災害に遭遇した時に人は恐怖に身構え黙して懸命に付近の様子をうかがうのではないだろうか。
この映画は最後までその状態が続きます。
映画は記録した20日間を辿っていきます。
一日一日が本当に長い。映画館の暗闇の中にいて大画面に映る凄惨な風景や人々、そして飛来する航空機の爆音やミサイル音に晒され続ける。
まだ3日目かと暗澹たる思いがするのです。これが20日間も続くのかと。
(実際は、マウリポリ陥落は5月20日であり映画が終わった後2か月も続いたのです)
映画はやっと17日目を迎える。
でもまだ3日もあるんだ。
記者が生きて脱出できていることがわかっていても胸を締め付けられるような緊迫感が伝わってくる。
とりとめのなくなりましたがなんとかこの後も進めたいと思います。
ウクライナに平和を!
※画像は想田和弘監督の『五香宮の猫』のポスターの一部。明らかに猫が何かに怒っている。映画鑑賞後想田監督発案の感想会が開かれました。
このポスターはその場のじゃんけんに勝って戴いたものです。欲しかった。