岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

浅田訴訟第1回高裁審報告集会です。

2018-09-15 21:43:00 | 「65歳で障がい者を差別するな」浅田訴訟

浅田達雄さんを支援する会の「ささえ93号」からの文章部分を転載させていただきます。

写真撮影は岩清水日記管理者です。

9月11日、県外から東京、全国肢障協(事務局長、事務局次長)、香川県、広島県から障害者当事者8人、きょうされん広島支部1名、介護のヘルパーさん7人、計17人、県内参加者76人が駆け付け、傍聴席に入れず外で待つ人が多数でました。以下,口頭弁論と報告集会の概要を報告します。

 口頭弁論では?

浅田訴訟弁護団の弁護士の古謝です。いつもお世話になっております。

さて,本日,浅田訴訟控訴審の第1回口頭弁論が行われましたので,概要をご報告いたします。

まず,控訴人(岡山市)側が控訴状,控訴理由書を陳述し,被控訴人(浅田さん)側が控訴答弁書を陳述しました。

そして,双方とも関係証拠を提出した後,浅田さん本人と弁護団の呉弁護士による意見陳述が行われました。そのうえで,裁判長から双方に対し,それ以上の主張はないことの確認がなされた後,弁論終結となりました。

判決は12月13日午後1時30分から言い渡されます。弁護団の予想通り,1回結審ということになりました。以上,簡単ですが,ご報告いたします。

原告浅田達雄さんの陳述

私は、2013年2月13日に岡山市から「岡山市介護給付費等不支給(却下)決定通知書」を受け取りました。常に介護が必要な私にとって、介護の打ち切りを告げるこの通知は、「死ね!」と言われたのと同じです。今後、どうなるのかと恐怖に襲われて気持ちが不安定になり、半狂乱になってしまいました。

21回の口頭弁論を経て今年の3月14日に1審の判決が出ました。岡山地方裁判所は、私の訴えをほぼ全面的に認め、岡山市に対して、私が65歳時に申請した障害者福祉の却下処分を取り消すこと、従前と同様の時間数の介護を支給すること、精神的苦痛に対する慰謝料を支払うことを命じました。

裁判の結果を振り返ってみると、国も支援法第7条の介護保険優先原則があっても個人的なニーズ重視の対応をするような通達を各自治体に出しているのに、岡山市に対して有利な判決は、出さないと思っていましたが、確信できませんでした。全面勝利の判決をもらえたのも、弁護団の先生・支援する会のみなさん、日頃から私を支えて下さっているみなさん、そして全国で支援してくださった方々のお蔭です。

私の生きる権利、人間として平等な権利が保障されたことの気持ちを伝えます。「勝った~!」嬉しいです。「よかった!おめでとう。」というメールや電話をくださった知人が数多くいました。これで、以前のような生活に戻れると思い、心から喜びました。

しかし、喜んだのは2週間という束の間の出来事。岡山市は28日の控訴期限直前になって市議会も通さずに市長の権限だけで上告しました。控訴理由書を提出日期限直前の5月17日に臨時市議会を開き、決議をとりました。その結果、残念ながら承認されました。

控訴理由書には、1審と同じような準備書面を出してきて支援法第7条の解釈がおかしくて判決が間違っているようなことを記載していますが、間違っている解釈をしているのは岡山市ではないかと思います。臨時市議会の場で、今後も私のように介護保険を申請しなかった者に対しては、処分を行うと宣言しました。

5年という長い時間をかけて勝ち取った、“生きる権利”を取り上げて岡山市は何か得るものはあるのでしょうか?

私は、重度障害者としてだけではなく、一人の市民として、行政に対して、悔しさと情けなさと大きな失望を抱きながら今を生きています。

裁判官のみなさん、傍聴者のみなさん、そして、岡山市側のみなさん、私は最後に訴えます。「私は、なにか間違ったことをしましたか?」。

私は、自分の障害からくるからだの不自由さを一つ一つ克服し、歩けなかったのに杖を利用して歩けるように、さらに仲間と共に地域で生活することから一人で自立した生活をすることなど、次々とチャレンジしてきました。また、何とか仕事がしたいと必要な電動タイプライター・ワープロ・パソコンの技術を取得して活用し、自動車の運転免許取得など、家族とまわりの人の支えの中で、ちょっとした仕事につくことを実現するなど障害がもたらす困難を乗り越えてきました。

しかし、今回の岡山市の処分は、行政権力をもって私の努力だけではどうにもならい社会制度の矛盾を利用した障壁をつくり、私の人間らしい生活を破壊しようしたものです。そんなことが許されていいのでしょうか。

私のような重度障害者が人間らしく生きたいと願うのは、今の日本の社会でもゆるされないことでしょうか。

かつて、私の先輩障害者は「米喰い虫」「ごくつぶし」ついには「非国民」と罵られました。岡山市の処分はこうした罵りと同じことを行政の手によっておこなったものです。

裁判官のみなさん。私のような人間が当り前に生きることができることを憲法は保障していますよね。憲法に従ってつくられた障害者に関する法律である支援法は、私が人間らしく生きるにふさわしい保障を不充分ながらしてくれていると信じています。支援法が憲法に照らして問題があるなら、また、岡山市の処分が憲法の理念とは外れた支援法の使い方をしているならば、ぜひ改めてほしいと訴えます。

今回の私の訴えで,現在の支援法にはいくつかの問題点があることを明らかになったと思います。この裁判で支援法の問題に対しても1審と同様に良い判断してくださることを心から願って私の陳述とさせていただきます。

代理人意見陳述

被控訴人訴訟代理人弁護士 呉 裕麻

本件訴訟は、岡山市が原告に送りつけた一片の不支給決定通知に対して、これが原告の憲法上の人権を侵害し、違憲・違法であることを明らかにすべく提起されたものである。

原告の障害の程度や、それまでの生活状況などを踏まえれば岡山市による不支給決定が、原告の命に対する危機を意味することは明らかであった。岡山市は、不支給決定が原告の生存権その他の憲法上の人権を侵害し、違憲・違法なものであると、容易に想像がついたはずであった。

それにもかかわらず、岡山市は不支給決定処分をしたのである。

憲法は、個人の尊厳、幸福追求、生存権、平等原則を定めている。原告も当然に、かかる憲法上の人権を享有する。

他方で、岡山市は憲法尊重擁護義務を負う。これは、岡山市は、その行政の遂行にあたり、原告を含むひとりひとりの市民について、それぞれの人権を尊重するべきことを意味する。

そのため、岡山市は、自立支援法についても、原告の人権保障の観点から解釈・運用すべきであった。

自立支援法の解釈・運用の点に関し、厚労省は各地方自治体に対して、通達を送っている。そして、多くの自治体は、厚労省通達を踏まえ、支援法7条を合憲的に解釈・運用してきた。

しかし、岡山市は支援法7条について、介護保険の申請がなければ支援法の支給を打ち切りにすべきことを定めていると独自に解釈し、かつ断行したのである。

岡山市のこの度の不支給決定は明らかに原告の人権を侵害するし、支援法7条の解釈・運用を誤っている。

岡山地方裁判所は 憲法の人権尊重の理念や 憲法尊重擁護義務を念頭に、支援法7条の解釈運用の在り方を丁寧に論証した上で岡山市の不支給決定が誤りであることを明らかにした。

岡山市は 原判決の判断に未だに納得ができず、不当にも控訴に及んでいる。

原告としては控訴審においても原判決の判断が維持されるものと確信している。そして、岡山市に対しては、支援法に関する解釈運用の在り方を憲法の理念に沿うよう改めるべきことを求める。

以上

報告集会より

報告集会には、傍聴できなかった人たちも加わって準備した会場いっぱいの参加者で熱気あふれる集会となりました。

吉田代表世話人、原告浅田さんのお礼と12月13日の判決に向けて頑張る決意の表明に続いて、呉弁護団長が本日の高裁口頭弁論は「一審判決の審査の場であった」と次のようまとめられた。

  1. 控訴を受け取った高裁は、半年間に一審の判決に至る内容を審査してきていて、高裁の審査は終わったことを明らかにした。

  2. 控訴人の岡山市と原告側に、控訴に関する提出書面と新たな書面のないことを両者に確認をし、12月13日を判決日とした。

  3. 岡山市の主張も原告の主張も裁判所は「わかった」と。このことを前提に一審判決に疑義があり変更する意図があれば、両者に問う。この問いはなかった。

  4. 本日の浅田さんの訴えをしっかりと聞いてくれた。わざわざ陳述書のコピーをもう一部要求したことに現れている。「判決は期待できる!」

 岡山市の控訴理由に対して金馬弁護士は原告側が強調した2点を挙げた。

 一つは処分が、浅田さんの生活にそぐわなかったこと。二つは「訴えの利益がない」する岡山市の主張は、一審の原告の主張ではっきり反論しているし、判決もこれを支持していること上げましした。

 古謝弁護士から、岡山市は、①地裁に主張してきたことと同じ。②判決が7条の解釈が間違った解釈をいると主張していること。その上で一審の判決は7条に関して新たな解釈をしていないことを挙げて、岡山市の7条解釈がまちがっていると批判しました。

 参加者から次の方々が発言されました

 京都から駆け付けた松本恵美子さんは「南川さんの意見をどうとらえているか」と質問。光成弁護士は「支援法、介護保険の実態を知らない意見で、原告団はきちんと反論。問題にしていない」と。

 東京からヘルパーさん3人と参加した鈴木敬冶さんは「浅田さんの陳述はよくわかり良かった。彼の気持ちに納得できた」と。

 全国肢障協の支援代表として次長の松本三津男さん、事務局長の渡邊覚さんは、「全国肢障協が浅田裁判を全力で支援していること。この裁判が勝利すれば全国の重度障害者の介護要求が大きく変わる」と。

 また、広島県廿日市市の秋保和徳さんは「65歳問題は介護必要な障害者、高齢者にとって大きな問題。判決に期待!」 岡山市の控訴理由について質問した広島県世羅町の盛次信晴さん。福山の藤井洋治さん、さらに、欠かさず傍聴においでくださる高松市の横山君子さん、そして県内多くの眠さんの傍聴がなにより浅田さん、世話人会を支えてくれます。

感謝です。


集会の最後に支援する会代表世話人の中島純男さんは「権利から人権保障の筋道を浅田さんが提起してくれました。この年間、支援をする会は議会陳情等も含めて岡山市議会にも浅田訴訟の理解を議会の中に増やすこともできた。12月13日の判決が新たな人権保障の砦ができるまで引き続きご支援を」と締めくくられました。

以上、転載終わります。


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