岩清水日記

「あしひきの岩間をつたふ苔水のかすかにわれはすみわたるかも」良寛

「日本病」の特質とは? その2

2005-07-09 10:22:15 | JR西福知山線脱線転覆事故&安全
7月3日掲載の続きです。

「組織事故」の多くは「組織犯罪」へと落ちていく。
・雪印、三菱自動車、東京電力、三井物産の事件は、
間違いなく犯罪である。
この犯罪の共通する要因はなにか。柳田邦男さんは9項目を
上げている。

1.危機意識が希薄
2.目の前で起きたコトの重大性に咄嗟に気づかない
3.面子や責任を恐れて、対応が遅れる

4.過去の教訓や他企業、他業種の事故情報・危険情報を
  生かさない
5.ヒューマン・ファクターの本質が理解されていない
6.バーチャル情報と現実の倒錯

7.複数の企業によって事業や作業を進める場合に、
  安全の落とし穴を生じる
8.営業成績、利益追求、効率が金科玉条とされ、
  安全の厳しい検討・評価が二の次にされる

9.世代交代による従業員の価値観の変化、職場文化の世代間
  伝承の困難化、臨時雇用の多い下請企業の技術水準の低下
  などの条件が、安全管理計画の視野に入れられていない。

この9つの項目の中で、
「5.ヒューマン・ファクターの本質」
「6.バーチャル情報と現実の倒錯」については、
 少し詳しい説明が必要と思われる。

「ヒューマン・ファクター」
人間はミスをするという前提に立つ。
そして、人間はどのような状態、環境の置かれれば、そのミスを
起こしやすくなるのか。
特にストレスがかかった場合に予想もできないミスをすることが
わかっている。
また厳しい処分や懲罰は、ミスを防止するどころか、
ミスを誘発する。
では、どのような職場環境がミスを少なくさせるのか。

1.風通しのよい職場の人間関係
2.意欲や生きがい感の活性化
3.ミスを誘発しないように人間工学的に配慮された装置や
  作業条件
4.万一ミスがあったも事故にむすびつかないシステム

JR西は4項目とも×である。

ヒューマン・ファクター研究所という組織があり、
ヒューマンファクターの研究や講演を行なっている。
実はJRもその講義を受けてる。
受けていながら、組織改革ができなかったことに、
根の深さがある。

「バーチャル情報と現実の倒錯」
最近の航空事故および事故未遂に顕著な現象である。
計器を全面的に信頼して、窓の外を見ていないのだ。
計器が異常を表示すれば異常だが、正常表示なら、窓の外で
何がおころうが正常ということ。
計器の表示は特定の個所に設置したセンサーによるが、
現実に事故が起こるのは、特定外の個所でもありうるという
考え方ができていない。

例えば、
新日本製鉄名古屋製鉄所ガスタンク爆発事故は、従業員から
炎を見たという連絡があったにも関わらず、操作室のパネルに
異常表示がなく、操作室の係員は「異常表示はありません」と
答えた数分後に爆発が起こった。

企業や人間が必ず陥る精神状態が簡潔に纏められてる。
参考にしない手はない。

現代8月号「一流企業を覆う日本病の危機」柳田邦男より

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