北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

部品がなければ作ればよい ~ ものづくりの原点を見ました

2019-01-30 23:41:41 | Weblog

 

 職場で使っている椅子が古いから買い替えよう、という話が浮上しました。

「専務はどうします?」と訊かれたのですが、実は私が使っている椅子は総本革張りのとっても高級な椅子。カタログ価格を見ると、数十万円はくだらないという豪華な椅子なのです。

 この椅子は、もう相当昔のことですが、わが協会の会長と言われる人がまだオフィスに部屋を持っていた頃に会長用として購入した椅子なのだそう。

 ところがさすがに年月を経て、あちこちガタが来ています。

 ガスの圧縮を利用して、レバーを引いて椅子の高さを調節できるガスシリンダーがついているはずなのですが、いつしかそのガスが抜けてレバーを操作しても椅子の高さの調節ができなくなり、座ると一番低い高さになってしまいます。

 一応高級な家具調椅子なので、メーカーもしっかりしていて、カタログには『修理をするならこちらへご用命を』という連絡先も書かれているのですが、修理に必要なガスで上下するパーツがあるか、と尋ねたところ、丁寧に「すでに生産を終了しており、在庫もございません」という返事が届いて、修理はほぼ不可能に。

 今の椅子の高さは、(あと3~4センチくらい高いと丁度良いんだがな)と思うくらいの不具合なので、我慢すれば良いようにも思い、新しい椅子を買うのはちょっと消極的な私でした。
 
 
 そんなこんなで、椅子を買うのか買わないのか、返事をあいまいにしていると、職場の一人が、「知人に修理ができる人がいるかもしれません」と言い出しました。

 なんでも、実験用の器具などをオーダーメイドで作ってくれるような工場の方だそうで、いろいろな器具や道具を駆使すればなんとかなるかもしれない、とのこと。

「まずは一度見てもらいましょう」ということになって、先週、その方に私の部屋まで来ていただいて、椅子を見てもらいました。

「ガスで上下するタイプなんですね」
「はい、でもメーカーにももう同じパーツはないとのことなので、半分諦めているんです」

 するとその方は、「要は、決まった高さに調節ができて、そこから高さが下がらなければガスでなくても良いんですよね」
「あー…、は、はい。そういうことです…ね」

 突然、必要なポイントは何かをズバッと指摘されて戸惑う私。

 確かに、椅子の座面があと3~4センチ上がってそこで高さが固定されるならそれで要求は満たされます。

「んー…、わかりました。椅子の中心の棒が支えられれば良いと思うので、既成のパーツを組み合わせてみます」

 そういって彼は、棒の直径を測って帰っていきました。


    ◆

 そして今日、その方から「例の椅子の修理パーツができました」という連絡があって、今日の午後に来てくれました。

 持ってきたパーツは、厚さ一センチの金属の半円の輪を二つ組み合わせて、椅子の中心の棒に取り付けて締め付けるだけの簡単なもの。

 これを私の体に合わせた椅子の高さにして、そこで締め付けると、「おお!」 椅子の座面が下がりません。

 何度か調節をして、私の体と机の高さにフィットするところで強く締め付けて完成。

 低くて使いにくかった椅子の高さがちょうどよい高さになりました。

「ありがとうございました。お値段はおいくらになりますか?」
「そうですね、既成のパーツの組み合わせなので、2千円くらいです」

 
 求めるものが何かを理解したうえで、それを実現するための知恵と、それを作れる技術があれば、高いお金をかけなくても必要な目的(修理)は果たせるのです。
 
 最近は自動車でも、壊れればすぐにアセンブリという、部品全体を取り換えてしまいます。

 これだと、お金はかかりますが、修理の手間は著しく減ることになります。

 それは確かに効率的なことなのかもしれませんが、あまり考えることはありません。

 今回の椅子の修理は、パーツがないところから始まって、目的を達成するという、ものづくりの原点のようなものを見せてもらって、心が洗われました。

 明日からは、これまでよりさらにすがすがしい気分で仕事ができます。

 良かった!

コメント
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