北の心の開拓記  [小松正明ブログ]

 日々の暮らしの中には、きらりと輝く希望の物語があるはず。生涯学習的生き方の実践のつもりです。

報徳と言わずに精神を語る

2014-11-28 22:39:36 | Weblog

 

 水産関係の報徳について勉強しようとマリンバンク信漁連をお訪ねしたところ、会話をする中で報徳の関係者で集まって一度飲みませんか、という話になりました。

「それはいいですね」ということで先日待望の報徳懇談会を開催。水産業と農業それぞれの報徳活動に詳しい方と私の三人で大いに盛り上がりました。

 つい先日も、「二宮尊徳と北海道開発」というタイトルでミニ講演をした私ですが、感想の一つとして「あまり報徳、報徳と言わない方が良いのではないか」という思いがありました。

 確かに戦中戦後の疲弊した北海道のなかで、皆で協力しながら頑張っていこうという精神的支柱の一つとなったのが報徳活動でした。

 それが明治の後半にドイツの例に倣って産業組合法(1948年に個別組合法の施行にともなって廃止された)という画期的な法律が作られたときにも、報徳が参考になったと言われます。

 その結果協同組合運動が盛んになった頃に、小林篤一はホクレンをつくり、黒澤酉蔵は雪印乳業の前進である酪連を作り、安藤孝俊は水産業振興に力を尽くしました。

 皆報徳の思想を胸に抱きながらも、彼らは「報徳」という言葉は使わずにその精神を自分なりの言葉で言い表しています。

 報徳に影響を受けた企業家として知られる松下幸之助、豊田佐吉なども報徳とは言わずにその精神を企業理念に組み込んでいます。

「これからは、報徳という単語を使わずにその理念を今日的に伝えられるような伝え方が必要ですし、それに共感して理解できる人材をいかに育てて行くかが課題だと思うようになりました」と私が言うと、水産の方が「おっしゃるとおりだと思いますね。安藤孝俊も、制度を作ることよりも人材教育だというようなことを言っていますし」と賛同してくれました。

 
        ◆    


「現代で言うと、報徳的経営者の代表は稲盛和夫さんですね」と農業に詳しい方が言います。

「彼も『報徳』とは一言も言いませんが、話を聞いたり本を読んだりしているとその実践的な中身は報徳の精神に満ちていることが実によく分かります」
「なるほど」

「最近は中国でも稲盛さんが主催する稲盛塾が盛んだそうですよ。現地にいる日本人ではなくて、稲盛さんの本が中国語に訳されて、中国人の経営者たちがそれを読んで現地に中国版稲盛塾ができているんです」
「私も掛川にいたときに、今の拝金主義を改めるような理念として報徳を学びたいという北京大学の教授が榛村市長を訪ねてきましたよ」

「そうですか。今中国では現地の企業の社員の離職率がものすごく高いんだそうです。ちょっと働いてもすぐにやめて別な会社に移ってしまう。それが稲盛塾で学んだ人たちが経営すると離職率が下がっているんだそうです。報徳の精神のこもった稲盛流で経営をすると社員の心にも通じるものがあるのだと思います」

「うーむ、それは逆に恐ろしい話です。中国国民が感化されて精神的な力をつけると本当に日本も危ういかも知れませんね」
「ははは、でも『中国はまだまだだ』と稲盛さんが言っていましたよ」

「へえ、それはどうしてですか」
「講演が終わった後に稲盛さんの本のサイン会があったそうですが、順番に並んでいられなくて次々に本を差し出してくるんだそうです。これだけ話を聞いた経営者クラスでさえ順番を待つくらいの実践ができないようではまだまだだと思われたようですよ(笑)」


 報徳と言わずに報徳の精神でまちづくりや社会づくりをする。

 迂遠ですが、なにか方策を考えたいものです。

 

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