先日実家の両親を訪ねた時のこと。
家に入ると私の顔を見た途端に父が開口一番笑いながら「いやいや、いま水だけの昼ご飯が終わりました」と言うのです。
「ええ?昼ご飯が水だけって体力持たないよ」
「はは、俺も笑っちゃうよ、水だけだもんな」
「母さんは?」
「トイレかな、今来るよ」
やがて母が居間に入ってきたので、「昼ご飯が水だけって、随分耐乏生活になったね」と言うと母は「ええ?お父さん、そんなこと言ってるの?いやいや…」と渋い顔。
「え?なに?」
父がテレビのドラマを大きな音を出しながら見ている後ろで母が言うには、「昨日の夜は地域の夏祭りがあって、出店で焼き鳥だとかいろいろ買ってきたんだよ。で、それをさっきお昼に食べたんだよ」
「はあ、じゃあ食べたんだ」
「で、さんざん食べて、最後に水を飲んだのさ、そしたら最後に食べたものしか覚えてないんだよ」
母は、「お父さん、さっきお昼に焼き鳥食べたでしょ!?」と思い出させようとしますが、父は「えー?思い出せない」と怪訝な顔をするばかり。
「母さん、もういいよ。何か言えばなんとかなるわけでもないからさ」
ついさっき食べたものがもう思い出せないとは、やはり記憶の障害が進んでいるようです。
◆
そんななか、「何か買い物や用事はあるかい?」と母に電話したところ、翌日が父が月に一度の通院の日と知りました。
母が「こういう思い出せないようなことに良い薬ってないんだろうかね」と言うので、「じゃあ僕が父さんに付き添って病院へ行って先生に相談してみるよ」ということにしました。
母はそもそも父が何の症状で病院へ行っているかもよくわかっていないし、父自身も今ではわかっていないのではないかと思われます。
いつも父は病院から来る迎えのワゴン車に乗って病院へ行き、診察と点滴を受けて、生きと同じく病院の車で送られてくるので通院そのものには困難はないのですが、なにしろ医師とどんな会話をしているかなどは全く話してくれることがありません。
そこで私が付き添うことにして、事前に家での記憶障害や時間の概念があやふやになる見当識障害についてメモにしてこれを医師に見せるつもりでいました。
診察では医師から「お変わりありませんか?」という質問に対して父が「変わりありません」というやりとりから始まります。
医師は私がいることも意識して、「腎臓の数値がやっぱり悪いのでそれを改善する点滴とお薬を継続しましょうね」と説明してくれましたが、黙っているとそこで診察は終わるところでした。
そこでタイミングを見計らって、「先生、実は最近父が夜中に起きて服を着たりする見当識障害や、食べたものを忘れる記憶障害なども目に付くようになっているんです」と説明とメモを渡しました。
医師は「そうですか、それじゃあ以前もやりましたが記憶テストと脳の萎縮状況をMRIで見てみましょうか」と言って、すぐにその準備を手配してくれました。
診察室を離れて先に記憶テストを実施。
これはMMSE(ミニメンタルステート検査)と呼ばれる認知障害を測定するために普通に用いられているテストが行われました(私の立ち合いはなし)。
その後にMRIで脳の状況を検査し、再び医師の診察を仰ぎます。
医師からは「認知障害のテストなんですが、30点満点の24点でした。このテストでは23点以下だと認知症と判定されて24点というのは境界線上と言うところですね。
それとMRIの結果ですが、全体的に脳の萎縮は見られますが特に記憶をつかさどる海馬の萎縮が大きいことが見て取れました。先にも行ったように24点では認知症と言う判定ではないのですが、ご家族から見当識の障害が訴えられたという事で、脳の萎縮を抑制する薬を出しましょうか」という診断が下されました。
やはり父を一人で診察させている分には本人からはこうした訴えはありえないので、やはり私が付き添って良かったです。
帰りには今までの腎臓の薬の外に脳の薬を足した包みを一か月分出してもらってお中元かと思うような紙袋一杯の薬を持って帰ってきました。
とりあえずはその報告で母のモヤモヤした気持ちも少しは晴れたようです。
思ったことは声に出してみないといけませんね。
反省しつつ、これからも推移を見守ってゆこうと思います。
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