昨日から札幌入りして、今日は広場の委員会に出ておりました。札幌は気温が低くて真冬の様相。
本来この時期はまだこんな気候のはずですが、雪まつりの後に雨が降ったりしてなんだか分からなくなりました。
さて、今日もちょっと長いのですが、大変面白かった経済ブログからの引用です。マスコミはこの間、こぞって外需依存の日本経済の落ち込みを嘆いています。トヨタが赤字に転落し、パナソニックや日立も赤字に転落、耐久消費財輸出国の日本「オワタ」というフレーズをリフレインするばかりです。
「どっこい!そうじゃないんだよ!」というのがいつも参考にしている三橋貴明さんのブログ「新世紀のビッグブラザーへ blog」です。
今回は今のところ、世界の中でも日本経済の落ち込み方がひどく見える理由と、マスコミのもはや確信的な「書かない(書けない?)裏側」を教えてくれています。少し長いのですが、まずはこちらをゆっくりとご覧ください。
「新世紀のビッグブラザーへ blog 『続 輸出バブルの消滅』 2009.2.18」です
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http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/24596901.html
* * 【以下引用】 * *
(前略)
輸出バブルの消滅
http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/24509294.html
ブレイクダウン分析
http://blogs.yahoo.co.jp/takaakimitsuhashi/24421491.html
からの続きです。①ブレイクダウン分析 ②輸出バブルの消滅 ③本エントリーの順番でお読みください。
さて、新聞紙上では日本の第4四半期のGDP結果を受け、「外需依存国日本は輸出崩壊で破綻だ!」系の論調で埋め尽くされていますが、これは全く見当はずれです。むしろ今回の結果は、日本経済が「相対的に外需依存ではなかった」事実を裏付けてくれました。
それは、小学生でも分かる簡単な四則計算で証明できます。
Ⅰ. 日本の第4四半期の結果 再掲 (対前期比)
【内需部門】
■民間部門
民間最終消費支出(個人消費) -0.4%
民間住宅投資 +5.7%
民間企業設備投資 -5.3%
■公的部門
政府最終消費支出 +1.2%
政府公的資本形成(公共投資) -0.6%
【外需部門】
輸出 -13.9%
輸入 2.9%(※控除)
【総合】 -3.3%
日本の輸出対GDP比率は15.5%ですから、輸出が対前期比で14%減ると、これだけでGDPが対前期比でおよそ2.2%減る計算になります(※厳密には、GDPの輸出には「サービスの輸出」も含んでいますが、製品輸出に比べると大した金額ではないので無視)。
また、設備投資の対GDP比率も輸出とほぼ同じ15%ですから、民間企業設備投資の-5.3%により、GDPが対前期比で0.8%減る計算になります。両者を合わせて、GDP対前期比3%減少というわけですね。ここに個人消費の分などが加わり、総合で-3.3%となったわけです。(輸入や民間住宅投資は影響が小さいので、省略)
整理しますと、
■輸出 13.9%減 ⇒ 総合GDPを2.2%押し下げる
■設備投資 5.3%減 ⇒ 総合GDPを0.8%押し下げる
■個人消費 0.4%減 ⇒ 総合GDPを0.2%強押し下げる
というわけで、日本国内ではどうにもならない外需(輸出)の減少が内需に波及し、設備投資と個人消費合わせてGDPを1%ほど押し下げたわけです。1%押し下げたとは言っても、八割が設備投資なので、「輸出が総合GDPを2.2%押し下げ、内需に波及した結果、設備投資が総合GDPを0.8%押し下げた」
という表現が適切だと思います。日本だけ見てもよく分からないと思いますので、続いて韓国の第4四半期も見てみましょう。
Ⅱ. 韓国の第4四半期の結果 再掲 (対前期比)
【内需部門】
■民間部門
民間最終消費支出(個人消費) -4.8%
民間住宅投資 -4.0%
民間企業設備投資 -16.1%
■公的部門
政府最終消費支出 2.4%
【外需部門】
輸出 -9.2%
輸入 -12.8%(※控除)
【総合】 -5.6%
ちなみに、韓国の輸出対GDP比率は38.3%、設備投資対GDP比率は日本を若干下回る11%程度、個人消費は意外に高く対GDP比54%です。
日本と同じく、整理しますと、
■輸出 9.2%減 ⇒ 総合GDPを3.5%押し下げる
■設備投資 16.1%減 ⇒ 総合GDPを1.78%押し下げる
■個人消費 4.8%減 ⇒ 総合GDPを2.6%押し下げる
と、輸出の減少が激烈に内需を直撃していることが分かります。
「輸出が総合GDPを3.5%押し下げ、内需に波及した結果、設備投資と個人消費で総合GDPを4.38%押し下げた」
というわけです。韓国の前四半期は「縮小成長」中で、輸入減というGDPへのプラス効果があり、本当に幸運でしたね。(皮肉ですが)
これがもし、日本のように輸入増とは言わないまでも、輸入が±ゼロだった場合、民間住宅投資のマイナス分を無視しても、韓国の第4四半期GDPは対前期比マイナス7.88%という、李明博氏がショック死するような結果になっていたはずです。
もちろん、韓国の輸入減は資本財購入の減少を意味し、将来的な輸出激減を保証しているようなものです。韓国の輸出が日本並みの減少率になった場合、総合GDPのマイナスは対前期比5.6%程度では済まないでしょう。
要するに、今回(08年第4四半期)のGDPは、日本の経済構造について以下二つの事実を証明しているわけです。
■日本は輸出が減っても、内需はそれほど縮小しない(外需依存国ではないから)
■日本の輸出減少率は、世界の主要国のなかで最も大きい
日本の問題は外需依存云々ではなく、輸出の減少率が相対的に大きいことなのです。なぜ他国に比べ、日本の輸出減少率が大きいのかといえば、先日も書いたように日本の輸出製品の七割以上が耐久消費財ではなく、↓資本財と工業用原料だから↓です。
http://members3.jcom.home.ne.jp/takaaki.mitsuhashi/data_16.html#Kousei08Oct
つまり、トヨタやソニーの問題ではないのです。資本財は円高に強いという「強み」もありますが、需要減少の際に真っ先に購入が止まるという「弱み」を抱えています。今回(昨年第4四半期)はその弱みがモロに出たわけですね。
セブンアンドアイの偉い人(鈴木さん?)がテレビのインタビューで「不況の原因は何でしょうか?」と聞かれ、「マスコミです」と答えたそうです。それは別に否定しませんが、日本の輸出が(資本財中心ゆえに)世界に先駆けて激減したというのも、相当に大きいでしょう。
日本の輸出が世界に先駆けて激減したということは、今後の世界経済を見通す上で、非常に参考になります。
まず、中韓などの耐久消費財の輸出が中心の国の輸出減少率は、近々に少なくとも日本レベルにまで拡大する可能性が高いです。すでに韓国の1月の輸出は対前年比32.8%減という、前年11月(-18.3%)や12月(-17.4%)とは比較にならない水準にまで落ち込んでいます。
このまま韓国の輸出が回復せず、もしも韓国の09年第1四半期の輸出が対前期比で二桁、前四半期の日本レベルにまで落ち込んだとき、果たして内需への影響はどうなると思いますか? そしてわたしは、韓国の輸出が今四半期に奇跡のような復活を遂げるとは、全く思っていません。
そして、中国です。中国の前四半期の輸出は11月や12月でも、対前年比で一桁前半の減少率と健闘しました。理由は何度も述べたように、中国の輸出が耐久消費財中心だからです。しかし、その中国も今年に入り輸出の減少幅が拡大を始め、1月は対前年同月比で17.5%のマイナスとなりました。
中韓の輸出モデルが「資本財を輸入する」⇒「加工する」⇒「耐久消費財を輸出する」である以上、両国の輸出減少は以下のステップを辿ることになります。
ステップ1:外需縮小の影響で、資本財の輸入が激減する。結果、輸出減にも関わらず貿易黒字が拡大する「縮小成長」に陥る
ステップ2:外需が回復しないため、徐々に輸出減少率が拡大していく
ステップ3:輸出激減により、ついに貿易黒字が減少を始める
ステップ4:輸出対GDP比率が高い場合、輸出激減が内需を壊滅させ、事実上の経済破綻状態に陥る
韓国はすでにステップ3の段階に至り、中国はステップ2なわけですね。
このテーマ、個人的に大変面白いと思いますので、続きます。次はドイツの第4四半期GDPの詳細が出る2月25日ごろに、中独両国のGDPをブレイクダウンします。
* * 【引用終わり】 * *
いかがでしょうか。
日本が真っ先に不況になったのは、中国や韓国などの組み立て産業の国が、製品を作る道具や材料を買わなく(買えなく)なったのが原因というわけです。
トヨタの自動車やソニーの製品が売れなくなったからではない、と言うのが三橋さんの分析。外国と比べたときの日本の貿易構造が分かっていないと、分析や評価を正しくできないのではないでしょうか。
こういう分析をしっかりとしてくれた記事になかなかお目にかかれないのはどういうわけでしょうか。
もちろん、だからといって好況になるわけではありませんが、少なくとも「不景気だ、もうだめだ」とばかり言い募って、消費マインドを下げさせるよりも、マイナスの要因をしっかりと分析し明らかにすることで、不景気の度合いがどの程度かを予想させる方が心の準備につながるのだと思います。
いろいろな記事も、何を書いて何を書いていないのかを考えなきゃ行けないとは・・・。うーん