尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

任命拒否は「違憲」であるー学術会議問題②

2020年10月05日 20時46分26秒 | 政治
 学術会議会員の任命拒否問題。1回目に書いたように、そもそも内閣側に学術会議推薦者を拒否出来るという法解釈は成り立たないと考える。それは今までの政府側の公式的な見解でもあった。しかし、2018年に内閣府と内閣法制局で法解釈の協議が行われていたのと今回明らかにされた。今年の9月27日にも確認をしたという。そうなると、検察官定年延長問題と同様に、国民に知らされないところで政府が秘密裏に法解釈を変えたということになる。さらに、2016年に欠員が生じたときも、会員の任命に難色を示し補充できなかったのだという。
(法解釈の推移=東京新聞)
 この問題に関して、5日夕方に菅首相が内閣記者会のインタビューに対し「前例踏襲でいいのか」と語った。しかし、前例踏襲でいいものもあれば、良くないものもあるだろうと思う。ただし、前例踏襲ではいけないと思ったならば、そのような考えを事前に国民に示し、法律を変えたり(あるいは法解釈を変えたり)しなければいけない。今回は突然「前に解釈を変えておいた秘密にしてたけどね)」という闇討ち的やり方である。そして「合法だ、合法だ」と言ってるのである。

 これまで明らかにならなかっただけで、実は裏で学術会議をめぐる闘いが起こっていたことが今回判った。今回の事態は菅内閣になったから起こったのではなく、安倍内閣が続いていても起こったはずだ。(ずっと前から官邸を取り仕切る「実質的菅内閣」だったのかもしれない。)菅内閣発足後、臨時国会召集が遅れていて所信表明演説が行われていない。コロナ対策に専念するなどと言うが、10月1日にはこういうことが起きると事前に判っていれば、確かにこの時期に国会を開いているわけには行かなかったのだと判る。
(任命拒否に反対する集会)
 ところで、仮にこの法解釈変更が成り立つと考えても、今回の措置は不当なものだ。例えばだけど、サイコロを振ったら6の目が出たから「6人排除」だというなら、明らかに不当な公権力発動だ。排除の理由は「合理的に納得できるもの」でなくてはならない。しかし、菅首相も加藤官房長官も「人事」を理由に納得できる理由を示さない。今後何らかの「理由」らしきものが示されたとしても、多くの人を納得させるものにはならないだろう。どう考えても6人もの学者に対して、合理的な理由が示せるとは思えない。

 排除された人は、これまでに安倍政権が進める強権的なやり方に異を唱えたことがあるという共通点がある。いかにこじつけたとしても、それ以外に「理由」は考えられない。そうすると、これは「思想・良心の自由」(第十九条)、「言論・表現の自由」(第二十一条)、「学問の自由」(第二十三条)などとともに、平等権を定めた第十四条「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」に反する。政治的な信条を理由に不利益を受けたことは明白なのだから。

 どう考えたって、裁判になれば政府が負けるに決まっている。裁判官がまともならば、これが法廷に持ち込まれたら、政府のやり方を認めるわけにはいかないだろう。「特別公務員」だから首相に任命権があるのが当然だみたいに言う人がいる。だが学術会議の「推薦」がある人物をはじくのだったら、よほど強力な「合理的理由」が必要だ。内閣がそれを示すことは出来ないだろう。問題はこの「秘密警察」的なやり方を見ても、「前例打破」などと言われてしまったら菅内閣を支持してしまう国民の側にある。
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