星のひとかけ

文学、音楽、アート、、etc.
好きなもののこと すこしずつ…

なげうつかつなげるか…

2023-12-08 | …まつわる日もいろいろ
やっとお部屋にクリスマスツリー飾りました。 毎年使っているほんのちいさないつものですけど…

そして今年もあと… ということで、 しばらく前から 今年を象徴する漢字、 ずっと考えていたんです。。 候補のひとつとして、、

 「擲」

テキ、 なげうつという漢字。 『骰子一擲』…これはステファヌ・マラルメの詩集のタイトル。 サイコロのひと振り。 、、わたしの頭の中にあったのは、 マーラー交響曲第6番で打ち下ろされるハンマー《一擲》のこと。 一撃でもよかったんですが、 撃は武器のイメージですし。。

今年5月に聴いた マーラー6番のノットさんによる、世界でも稀な《5回のハンマー》。 人生をふいに襲う悲劇のハンマー。 5回であるのか2回であるのか、、演奏会とはべつにして、 人生に振り下ろされるハンマーの意味を考え、 たしかに人生はその繰り返しなのかもしれないな…とも思いましたし、 今年を象徴するイメージでもありました。 詳しくは語りませんけれども…

つい先日のベルリン・フィル公演のベルク「管弦楽のための3つの小品」でも 最後の巨大なハンマーの打擲に驚きました。 マーラー6番を意識した曲とのことで成程と思いましたが、 バリッ‼とすごい音がしたので、見たらお餅もつけそうなしっかりした木製のハンマーでした。

でも、、 私自身の一年を考えたら おおむね無事に過ごせた一年であったと思うので、、 ハンマーの「擲」の字は無しにしました。 それでは、、 もうひとつの候補は…


、、 今年の春ごろ たしか堀辰雄の小説を読んでいたときだったと思います。

 「怺」

という漢字にはっとしました。 「こらえる」、、 ふつうは「堪える」と書きますが、 堪えるは、痛みや苦しみをじっと我慢するという「耐える」と同様の意味かと思います。 でも、 堀辰雄が使っていたのは、 「辛抱する」「惑わされないように心を保つ」、、そういう意味でこの「怺」(こらえる)という字を何度か使っていました。

あぁ そうか、、と気づかされました。 心を保つ、、 りっしんべんに「永」です。 こころをとこしえに… そのような意味の「こらえる」。

この夏、 ミラン・クンデラの『不滅』を読んでいた時もこの「怺える」という言葉を思い出していました。 作中でアニェスが思った事。 世界が耐えがたいものになったら、勿忘草を一茎だけ買って、その青い点だけ見つめて街を歩こう…
、、アニェスはずっと「怺えて」いたのです。 やり場のない心をなんとか保つように…。。

しかしこれもまた、 私自身のことではないような気がします。 確かに世界には耐え難い物事がいっぱいあります。 だけどまだ私は勿忘草をかざして世界を遮断するほどには、まいってはいない、と思う。。


それでは…?  そうして考えたのが…

 「継」

つなぐ、つづける、うけつぐ、、 継続、、 古くなったものや破れたものに「つぎをあてる」という「つぎ(継)」もこの漢字ですね。 私のこの身体もずいぶん継ぎ接ぎしてきました。 それでもまだ命をつないで暮らしをつづけて、、 破れそうな心にも早めに「継ぎ」を。。 

そして この字は 「まま」とも読みます。 継子(ままこ)…血のつながりのない、という意味の。。 この意味が私に特別重要なわけではありませんが、 血のつながりのない、という事も最近考えている事でもあって、、 つまり、 血のつながりの無い他人同士の人間関係をつなぐことこそが人生の長い長い道のりの重要課題なのかな…と、 最近よく思うのです。

血のつながり、という意味以外でも 異なる民族、 異なる宗教、 異なる地域、 異なる環境、、 異なる背景をもつ人間同士がわかり合うことの困難さが さまざまな不幸や悲劇に結びついてしまうことがある… だからこそ もともとつながりの無い者同士が心を寄せ合うことの大切さ、 難しくてもやらなければならないこと。。

「継」という漢字の 旧字体は 
 「繼」
という、 ばらばらの糸をつなぎ合わせて成り立っているようです。 ひとつの部屋にちっちゃな「糸」が4つ並んで、そして大きな「糸」になる、、 そうやって見ると可愛い漢字にも見えてきます。


、、というわけで



明日のために、  来年のために、、



今日を 継ぐ。





今夏、スウェーデンにいらした方からのお裾分け、メダルチョコ。ずっと冷蔵庫に… クリスマスにいただこうかしら…

今夜、Nobel Prize Concert の中継もあるようです。 エサ=ペッカ・サロネンさん指揮。