星のひとかけ

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どうか生き延びて…:ピエール・ルメートル『われらが痛みの鏡』

2022-02-26 | 文学にまつわるあれこれ(ほんの話)
キエフから逃れようと 車でぎっしりの道路、 国境をめざす荷物を抱えた女の人やちいさな子供、 ただただ歩いていく姿を見て胸がつまる、、

昨夜は地下壕のような場所に身を潜めている夢をみました、、 わたしにできるのはそんな心配をすることだけ、、

侵攻が始まろうという時の、 西をめざすひとびとの列を見て、、
第二次大戦のナチスによるフランス侵攻を描いた ピエール・ルメートル著 『われらが痛みの鏡』を昨年読んだ時のこと 思い出してしまいました。 

パリにナチス軍が近づいてきて ひとびとは一斉に南へ逃れようする。。 荷物を積んだ車、 その脇をあるく人々、 その様子が一昨日のニュースの様子と重なって見えてしまった。 
国境つづきの大陸を軍隊が侵攻してくるという状況が、 島国の者にはなかなか実感できなくて、、。
戦争が主題ではないけれど イアン・マキューアンの『贖罪』ではダンケルクへ退避する兵士たちの列また列の様子がリアルに描かれていた。 ただただ歩く、 海をめざして、、 その傍らには作物の植えられた畑や田園がひろがっている。 戦場とはこんな場所なのか、、と虚をつかれた。。
でも いまの世界でこんな光景を目にするなんて。。

ルメートルの戦争三部作は、 戦争の愚かしさ、 くだらなさ、 俗悪さをカリカチュアしてみせる一方で、 登場人物たちは悲惨な状況を逆手に取るかのように ふてぶてしく、 逞しく、 生き延びてみせる。 

最強の砦といわれた ベルギー国境のマジノ線もドイツ軍に攻撃され、 ルメートルの描く軍隊の司令部はあっけなく大混乱に陥る。 指揮系統もめちゃくちゃの中で 兵士もとにかく逃げる。。 

、、 でも 現代の戦争は、 逃げる時間さえ与えない。。 たった一日でもう状況が酷いことにになっている。。 成人の男性は国内にとどまり国を守れというけれど、、 
そうして欲しい気持ちにはなれない、、


、、 どうか逃げ延びて。  生き延びて。


それしか考えられない。


 ***

ワレリー・ゲルギエフさんは今 ウイーンフィルと共にNYにいるのですね。。 公演の指揮者が急遽、 カナダの指揮者に変更になったと、、

メディアでは ゲルギエフさんとプーチンとの交友関係を指摘しているけど、 マリインスキー劇場を率いているトップとしては、、。 それに 今までの言動からして ゲルギエフがこの状況を支持しているとは思えない。。 さすがに今 アメリカで指揮するのは 本人も米国にとっても 双方にとって良くないと判断しただけでは…?

このまま亡命してしまえ・・・  できるものなら。。

、、しないだろう、、
ゲルギエフさんはロシアの中から世界をつないていくよう頑張ってきたんじゃないのか、、 と私は思っているのだけど・・・


もちろんこの侵攻は世界中から非難されるべき、、
こんなことは長く続かない。  まちがっていると皆がわかっていることだもの。






ピエール・ルメートルの大戦三部作 『天国でまた会おう』『炎の色』『われらが痛みの鏡』



、、 愛するひとのもとへ みなが帰れることを……

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