若い男女二人の恋の逃避行を父親が追いかける前半の旅は、音楽メロドラマかと思うほどとっつきやすい設定といい、いつもながらのアンゲロプロス式驚異的に長いブレスのショット構成といい、旅芸人たちを初めとした音楽の使い方といい、素晴らしい出来。
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」同様にアメリカへの憧れの曲「アマポーラ」から、映画全体のテーマ曲になっているアコーディオン・ソロにつなぎ、追いついてきた父親が死ぬまでのホールのシーンは、「旅芸人の記録」の歌合戦以来と思わせる傑作演出。
そこから黒い旗をたてた船の群れから、木に吊るされた羊たち、さらに村全体が水没した光景あたりまでは圧倒的な映像の連続で、正直ここまでは大傑作ではないかと思っていた。
だが正直、ここらあたりで“旅”は終わっている感じで、後どうも前半のような一貫性や情感のある場面は影をひそめる。代わりに内戦が始まるは、家族はばらばらになるわ、陰々滅々とした場面が続き、いささかしんどくなる。実際、何人かの客が出ていっていた。
それからわざとなのか、妙に意図のわかりにくい場面が続く。
クリストの作品かと思うほど白い布をずらっと並べ立てた中を、撃たれた楽団長が布に血をつけてよろめいてくる場面は、アンゲロプロスが嫌いなアンジェイ・ワイダの「灰とダイヤモンド」のラストの中途半端なパロディみたい。
アメリカに渡る船がCG丸出し、というのはアメリカ映画への皮肉なのか知らないが、違和感強すぎ。
なんで途中からああ調子が変わったのだろう。
(☆☆☆★★)

エレニの旅 - Amazon
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」同様にアメリカへの憧れの曲「アマポーラ」から、映画全体のテーマ曲になっているアコーディオン・ソロにつなぎ、追いついてきた父親が死ぬまでのホールのシーンは、「旅芸人の記録」の歌合戦以来と思わせる傑作演出。
そこから黒い旗をたてた船の群れから、木に吊るされた羊たち、さらに村全体が水没した光景あたりまでは圧倒的な映像の連続で、正直ここまでは大傑作ではないかと思っていた。
だが正直、ここらあたりで“旅”は終わっている感じで、後どうも前半のような一貫性や情感のある場面は影をひそめる。代わりに内戦が始まるは、家族はばらばらになるわ、陰々滅々とした場面が続き、いささかしんどくなる。実際、何人かの客が出ていっていた。
それからわざとなのか、妙に意図のわかりにくい場面が続く。
クリストの作品かと思うほど白い布をずらっと並べ立てた中を、撃たれた楽団長が布に血をつけてよろめいてくる場面は、アンゲロプロスが嫌いなアンジェイ・ワイダの「灰とダイヤモンド」のラストの中途半端なパロディみたい。
アメリカに渡る船がCG丸出し、というのはアメリカ映画への皮肉なのか知らないが、違和感強すぎ。
なんで途中からああ調子が変わったのだろう。
(☆☆☆★★)


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