prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「金環蝕」

2006年07月05日 | 映画
1975年度の山本薩夫監督による九頭竜川ダム建設にまつわる談合・汚職・隠蔽工作による殺人などをモデルに描く大作。

30年前の映画なのだが、主は変われどすることの変わらないこと、あきれるばかり。
政・官・財の癒着とはマスコミでいやというほど言われていることだが、それをコンパクトに、かつスケール大きく描いている。
派閥記者が堂々と高級ライターを総裁候補からもらっていたり、業界紙記者がリークされた情報を横流ししたりするディテールなども光る。
あと、どうやって建設会社が見積もり価格をもっともらしい理由をつけてかさ上げし(今みるとびっくりするのは、ダム建設費の見積もりが40億とかそこらへんなこと)、しかも入札に入るように仕組むか、といった手口が具体的に描かれていて、報道で知るだけより、腑に落ちる。

要するに、ここには悪人しか出てこないわけで、社会派ではあっても正義派的なヌルさはなく、あくの強い人物と芝居をみっちり詰め込んでいて、その分、今風でもある。
山本薩夫はもちろん戦後の代表的な社会派監督だけれども、社会悪を攻撃するばかりでなく結構楽しんで描いているみたい。

テレビ時代になって政治家もパフォーマンスに走るようになったと言われるが、もともと政治家には演技者的な資質がいるのではないか。ハッタリ、泣き落とし、作り笑い、駆け引き、恫喝、みんな「人の目」を前提にした振る舞いだもの。

ほとんどすべての登場人物にモデルがいるという。今見て一番わかりやすいのは幹事長の中谷一郎=田中角栄(絶えずばたばた扇子を扇いでいる)だが、森脇将光=宇野重吉や田中彰治=三國連太郎など、力のある役者がアヤシゲな人間を舌なめずりするように演じている
(☆☆☆★★)



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