prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「孔雀夫人」

2006年07月22日 | 映画
1936年、ウィリアム・ワイラー監督作。
成功した実業家夫婦が引退し、悠々自適のつもりでヨーロッパ旅行に出たところ、ヨーロッパの貧乏貴族にちやほやされた妻が浮かれて遊びまわり、夫婦の間にひびが入っていく。
故・淀川長治氏が宣伝を担当したが日本ではコケてしまい、本当にくやし泣きしたという点でも伝説的になっている映画。

ちょっと驚くのは、夫役のウォルター・ヒューストンの実年齢が52歳、妻役のルース・チャタートンのが43歳だということ。いかに財産があるとはいえ、日本の感覚では引退する歳ではない。欧米だと財産ができたら引退するっていうのが割と一般的というが、それにしても遊びたくならない方がフシギみたいなもの。
妻がヨーロッパの名家の老婦人に、あなたは息子と結婚するには歳をとりすぎてますと言われるのが、異様に迫力がある一方、そんなハズあるかとも思う。言い返せない息子がいかにもダラシないのだが。
今の感覚だと、妻が遊び歩くことにマヒしてしまってそれほど批判的な気分にならないのだが、どこまでが時代の産物なのか、こっちが判っていないだけか、なかなか判別しがたいところがあり。

53年に同じチャタートンが同じ役を演じたテレビ版リメークの他、多くのリメーク希望者がおり、晩年のグレゴリー・ペックも脚本を書いていたという。
アメリカとヨーロッパとの相克、夫婦の絆が浮かれているうちに壊れていくあたりのモチーフと、完璧と思える演出(ワイラー、なんと35歳)に魅かれて、ということか。
終盤の電話を手前に置いたパンフォーカスの使い方、どたばた出入りする船の乗客の出入りをバックでさばきながら、一瞬で決めるクライマックス、ラストのヨットの帆のちょっと舞台のカーテンのような効果。

写真は、「黒蘭の女」「偽りの花園」で主演したベティ・デイヴィスと一緒のワイラー。



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