70年代に作られたアメリカ映画で十本の指に入ると「タイム」誌に選ばれたうちで唯一日本で劇場公開されなかった作品(某配給会社のサイトで公開予定に入っていたことあるが)。
「地獄の黙示録」が公開されて間もなくテレビ放映された時、マーティン・シーン主演つながりで「地獄の逃避行」という題になったのが定着してしまっているが、中身は「地獄」といったおどろおどろしさの対極にあるといっていい。
連続殺人犯と彼と一緒に逃げる少女の逃避行であるにもかかわらず、ナット・キング・コールやエリック・サティの「グノシェンヌ」を木琴に編曲した音楽などで、ほとんどおとぎの国の話か、マーク・トウェインの少年冒険譚のようなニュアンスが出ている。
これがデビュー作の監督のテレンス・マリックはこの後リチャード・ギアの初主演作「天国の日々」を撮った後25年の沈黙に入り、「シン・レッド・ライン」で復活、最近でも「ニュー・ワールド」を撮っているが、スタイルはこの時すでに完成している。
地上のドラマを追うより、ふっと天上の世界を眺めてしまうような、一種超越的な、あるいはアニミズム的な視点、ほとんど異様なくらいの風景美へのこだわり。その一方で暴力にみちみちた地上からも、距離をとりながらじっと目を離さない批評的なスタイル。
ナレーション、特に若い、というよりイノセントな女性のそれの多用。
「ニュー・ワールド」では文明論にまで至るノセンスの喪失というモチーフは、アメリカ文学の重要な伝統につながっているよう。
(☆☆☆★★★)
「地獄の黙示録」が公開されて間もなくテレビ放映された時、マーティン・シーン主演つながりで「地獄の逃避行」という題になったのが定着してしまっているが、中身は「地獄」といったおどろおどろしさの対極にあるといっていい。
連続殺人犯と彼と一緒に逃げる少女の逃避行であるにもかかわらず、ナット・キング・コールやエリック・サティの「グノシェンヌ」を木琴に編曲した音楽などで、ほとんどおとぎの国の話か、マーク・トウェインの少年冒険譚のようなニュアンスが出ている。
これがデビュー作の監督のテレンス・マリックはこの後リチャード・ギアの初主演作「天国の日々」を撮った後25年の沈黙に入り、「シン・レッド・ライン」で復活、最近でも「ニュー・ワールド」を撮っているが、スタイルはこの時すでに完成している。
地上のドラマを追うより、ふっと天上の世界を眺めてしまうような、一種超越的な、あるいはアニミズム的な視点、ほとんど異様なくらいの風景美へのこだわり。その一方で暴力にみちみちた地上からも、距離をとりながらじっと目を離さない批評的なスタイル。
ナレーション、特に若い、というよりイノセントな女性のそれの多用。
「ニュー・ワールド」では文明論にまで至るノセンスの喪失というモチーフは、アメリカ文学の重要な伝統につながっているよう。
(☆☆☆★★★)
