prisoner's BLOG

私、小暮宏が見た映画のノートが主です。
時折、創作も載ります。

「母たちの村」

2008年11月14日 | 映画

色彩の鮮明なのにびっくり。
割礼要員の揃いの真っ赤な衣装や、フランス帰りの村長の息子の足元に並べる色とりどりの布の色とデザインの見事なこと。
あと、村の建物もよくある泥を固めただけの掘っ立て小屋ではなく、モダンアートと思わせるばかり。
欧米から見たアフリカの陰惨なイメージを、まず美的感覚から転倒させている。

割礼の習慣や、モーラーデ(保護)している女がそれを解く「言葉」を発しない限り、保護されている少女たちには手を出せないというあたりは、いかにも前近代的だが、村の小権力者たちが下らない掟を作って村人たちに守らせるあたり、下らなければ下らないほどそれを強制する権威づけになるあたりの構造は、今の日本と大して変わらないと思わせる。
さらに、割礼そのものを女たちにやらせたり,ヒロインに「罰」を与えるのも夫にやらせるあたりの狡猾にして薄っぺらなあたりもよその国の感じがしないくらい。
ラジオを取り上げることで、「外」の世界を知らさないようにして支配の網を破られないにしているあたりも、普遍的。

封建制に対する勝利が小リクツでなく、女たちの歌と踊りによる生命感の高揚で表現されるのが、清清しい。

監督はアフリカ映画の父と言われたセンベーヌ・ウスマン()。えてしてアジア・アフリカの旧植民地の先駆的文化人は上流階級の出で、旧宗主国などに留学して映画を学ぶ、という人も多いが、彼は肉体労働をしながら労働運動に従事し、フランス語を学び、小説を書き、四十を過ぎてからモスクワで映画を学び、初めてアフリカ発の映画を作ったという。
(☆☆☆★★★)