奇想天外、が売り物になっている脚本家のチャーリー・カウフマンの初監督作。
君塚良一が「シナリオ通りにはいかない!」のカウフマン脚本の「マルコビッチの穴」の分析で、実はああいう奇想天外な発想のシナリオは世界中のプロデューサーの机の上にある、そのままでは商売にならないので角をとるよう書き直して映画化するのが普通なのだが、これは初稿の書きっとばし感がどういうわけかスポイルされないで残っている、と書いていた。先の展開がわからないのは当たり前で、作者もわからないで書いているからだ、展開に詰まると必ず夫婦の危機に戻るとも指摘している。
そして「作者は意外と、まじめな人」とも。
で、監督したら、映像上のケレンがあまりない分そのまじめさが表に出てきた感で、あまり融通がきかない調子で家庭と仕事両方の行き詰まりがえんえんと描かれて、なかなかエンジンがかからない。
劇作家が人生の真実をすべて舞台に乗せようとしたらどんどんセットも大掛かりになりキャスティングもいつ果てるともしれなくなって収拾がつかなくなる、というのも人生をそれこそ綴り方みたいにそのまま描いている感じ。
映画の製作だが、完全主義的リアリズムを追求してサイレント映画なのに実際に鳴るベルをセットにつけさせたエリッヒ・フォン・シュトロハイムのエピソードあたりの方が実話なのに神話的というか、ホラっぽい。
(☆☆☆)