緑がかったような色彩の必ずしも見やすくない画面に違和感をもったり、どういう話とかどんなキャラクターだとかひとことでは言えないようなものだったりで、失礼ながら低視聴率だったというのもムリはないところがあると思う。
で、初めてきちんと見たわけだけれど、面白かった。
実はひとことでは言えないようなニッチな割り切れない部分を抱えたまま卒業してしまった生徒が、学校という荒い風に一応当たらないでいられる場所から社会に出て行って世間の荒い風に適応できるかどうかというのがモチーフになっていた。
日本中に蔓延している安全快適をわずかでも損なうものを排除した結果、はみ出るものを一切許さない同調圧力の息苦しさを、学校という場に典型的に出した。
ただ社会で不適応を起こしているOBが言うように、学校で「良い子」でいても社会に出たらものの役に立たないというのは確かだが、しかし社会で良い子にしていられなかったらもっと圧力がかかるのであって調子よくずるく世渡りしていくのと、必ずしも対立しない。
鈴木先生が演劇の指導にかこつけて、自分が「役割」を演じているという意識を自覚することで社会に対する齟齬感や違和感をもう一段階上から観察する立場を確保し、根本的な解決はしないまでも圧力を抜くことはできる、という知恵を出すのは心理療法に実際にある方法と通じると思う。
冨田靖子の壊れ方が怖くて可笑しい。
見たくない相手の姿にガリガリッとスクラッチがかかって見えなくなるあたり、何やら昔の猥褻物の修正みたい。
クライマックスの屋上での大勢の人物の配置や動きにムリや隙があるのは惜しい。
(☆☆☆★★)
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