目のアップをフューチャーしたタイトルデザインがモダンだなあと思ったら、その後の砂浜のほとんど抽象画のような構図とトーンにびっくり。そのあとも干してあるアンコウの頭のアップとか砂や雪に埋もれた舟など、オブジェ的な感覚を見せる。
封建的な家制度の中で女性が忍従を強いられるという内容に対して、画面の感覚はモダンであり、審美的ですらある。
真夏で傘を投げると、真冬で雪が降っている中に傘をさしているカットにつながるあたりの鈴木清順ばりのつなぎや、雪の中を歩く黒装束の老婆たちとぶつぶついう噂話がかぶさるあたり寺山修司の「田園に死す」かギリシャ劇のコロスのようでもある。
どちらかというと愚直な印象が強い松山善三がこういう演出をするのかとちょっと驚いた。
本ホームページ
六條ゆきやま紬@ぴあ映画生活