このシリーズは初めはスパイになるために人間の情を切り捨てざるをえなくなる非情さ描いていたのだが、次第に日本全体が戦争に向かっていくのを客観的に観察してこれはまずいと思いながら、それに協力せざるをえない悲劇性に向かっていき、この最終作である第五作では国全体の歯車を戻せなかった苦味は最も強くなる。
ひとつには上官である草薙中佐(加藤大介)と部下の三好次郎(市川雷蔵)との信頼関係が揺るぎがなく、揺らいだようでもお話の綾だろうと思えて実際にその通りになるから。戦友とか上官と部下といった軍隊内部の濃密な人間関係というのは、今はなかなかわからなくなっているが、ある種の憧れを誘うようなところがある。