前にラジオで吉田豪が取り上げて、ももいろクローバー卒業式を開き、全員感極まって号泣しているところで、いきなりプロレス的展開狙いのマネージャーが、ももいろクローバーは卒業してももいろクローバーZとして再出発しますとサプライズをかましたもので、まったく知らされていなかった全員が激怒してどういうことですかと詰め寄ったという話しか知らない。
アイドルそのものにもアニメやゲームと同じように特に嫌いではないしバカにもしないが、とりたてて興味はない。
で、それがまったく問題にも邪魔にもならず、感心したし感動した。初めのうち誰が誰だかわからないくらいなのが、最後の方ではひとりひとりが粒立つとともに全体としてもひとつという「グループ」になる。一皮むけたとか成長したという具合にステージが上がったという以上に、今を生き続けている完成することのない生命感が出た。
一番変化の激しい時期の女の子たちがどんどん変わっていく生き生きとした姿を映像に写し取ることが、劇中劇の素材である宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を通して生きることのはかなさとかけがえのなさといった普遍的なモチーフにつながっていくのがいいところ。
コーチ役になる黒木華がただの変な美術教師かと思っていると、髪をほどいて窓を開けて光と風を入れて自分のことを喋ってみるという演技メソッド(具体的に何と呼ぶのか知らないが)をやってみるところで、一瞬で「演じること」の魔法を見せるのが圧巻。この人自身もできあがった指導者ではなく、まだ何者にも十分なりきっていない青春の中を生きている先輩として位置づけられるわけで、先に待っている世界の大きさにわくわくさせられる。
ただ変な幻想シーンとか意味不明のカメオ出演とか、なんでやるかな。今からでも再編集しないかと思うくらい。
(☆☆☆★★)
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