スカーレット・ヨハンソンのなんか人間離れした柄を生かして、デヴィッド・ボウイの「地球に落ちてきた男」ならぬ「地球に落ちてきた女」的一篇。
映像から音響、時間の流れのすべてが、半ばエイリアンの感覚に調子を合わせた作り。思い切り通常のストーリーテリングや説明的な表現を切り捨ててデフォルメしているので、観客を選ぶタイプの映画ではある。「捕食」シーンなど、なんじゃこれはとしか言いようがない。
監督のジョナサン・グレイザーは「記憶の棘」でも観客をあえて裏切る、あるいはうっちゃるような内容と表現を試みていたけれど、今回はもっと突き詰めている。
冒頭の「変身」場面にちらっと蟻のアップがあったりするのだが、ずっと後でケーキを食べたヨハンソンが吐いてしまったりするといった具合に、蟻の性格が入り込んでしかも逆の方向に現れたのではないかと暗示しているようであまりはっきりしないといった具合に、おそろしくもってまわった表現をしている。
スコットランドが舞台なので、ときどき聞こえてくるセリフが英語のようで全然違う言語のようにも聞こえる(訛りがとにかく強いのです)。
ヨハンソンはセクシーだけれど、モデル的にスタイルがいいわけではないのがわかる。
エンドタイトルで出演者全員に役名がついていないというのは珍しい。