そこから盲目の元軍人という目の前にいても気が付かれなければ問題ないが、気づかれたら動物ドキュメンタリーでぱくっと食われそうな生々しい動物的存在の空気感そのものが怖く、そばでまったく言葉を発することができない状態を設定することで、サイレント映画的な趣向が巧みに盛り込まれた。声を出せない絶叫系ホラーといった趣。
家の間取りがわかるように侵入してから見せていくのも周到。
ひとつのクライマックスになる完全に闇になって立場が逆転する地下室のシーンまでは完璧に思える。
ただそこから見せ場をさらにしつこく積み重ねていくうちにやや破綻も混ざってきた。
どう考えても途中から追加される設定を成立させるのは盲人には無理だろうし、山上たつひこの「新喜劇思想体系」みたいなちょっと笑ってしまうようなシーンも出てくる。
よく考えて見ると、ひとり暮らしの盲目の老人がまったく近所に人がいない一軒家でどうやって買い物に行けるのだろう。車は使えないし、世話してくれる人もいそうもない。もっとも見ている間はそうは思わせないのだから、これは作り手の勝ち。
ヒロインのジェーン・レヴィは身長156センチと小柄で、映画の中でも小さいから窓から侵入できるという設定もあるが、モデル体型みたいな派手やかではないのがけばけばしく騒がしいアメリカからこぼれた感じに合っている。
(☆☆☆★★★)
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