もともと東宝の企画だったのが東宝争議で流れかけたのを、筈見恒夫の仲介で松竹にそのままスライドして実現し、主演も東宝専属の池辺良(この二年前にも阿部豊監督で同じ「破戒」の瀬川丑松役を演じている)というのも戦後間もないあまりがちがちに縄張り争いしていない時期の話という感じ。
市川崑監督・市川雷蔵主演版が硬質な叙情の一方でクライマックスを丑松と学校の生徒たちとの別れをメインにしていたのに対し、こちらはあからさまな差別主義者の教員たちとの対決がメインで子供たちとの別れはそのあとに続くものとして扱われる。
脇が小沢栄太郎、東野英治郎、東山千栄子など俳優座揃い踏み。
猪子連太郎が暴漢に襲われた後、宿場の道を友人の宇野重吉たちと歩いて対決の場に向かうのを上から押さえて追う木下恵介得意の移動撮影の見事さ。
それぞれのカットは割とさらさらした調子なのだが、組み立てられていくうちに流麗な名調子になる不思議さ。
宇野重吉の旧制高校的な友情に篤い友人役が良い味。
それにしても差別をストレートに扱っているのを見ると、妙にどきりとするこちらの感覚の方がひねくれているのだろう。
破戒(1948 木下恵介) - 映画.com
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