実をいうとバービーという女の子が遊ぶ人形の存在は知っていたが、それにケンという相手役がいるというのは知らなかった。
まず人工的なヴィジュアルに度肝を抜かれた。ここまで徹底して人工的なのって、ちょっと記憶にない。あるとしたら昔のミュージカルくらいか。
グレタ・ガーウィグのこれまでの作品系譜からフェミニズムという切り口から見るのが一般的なのだろうけれど、ミュージカル・コメディとしてのレベルと完成度も見逃せない。
ミュージカルというと「夢物語」というのが定番だし、人形遊びをしていた女の子にとってはこれが夢の世界ということになるのだろうが、その遊んでいた女の子が成長して姿を現すまでしばらくかかる。その間、バービーは女の子から切り離されて夢の中のパーフェクトな存在として冒頭にいる。
シャワーから実際には水が出ないなど、ヴィジュアルをちょっとでも乱すことは排除される。
ケンたちがいわゆる有害な男らしさに囚われる展開は、キャラクターとしては文字通りお人形だからかえって深刻になりすぎない。
バービーもケンも股間がつるつるという設定は、「ブックスマート」の劇中の人形としてもろに見せていたなと思った。
最初のうちはバービーもお肌が不自然につるつるで、そのうちわずかにささくれは入ってくる。かといってリアリズムには決してならない。
バービーのメーカーの役員会が、日本の女性活躍会議とかいうメンバー同様に男ばっかというのに笑ってしまう。
笑いごとではないが。
遊び相手の人形の側から遊びの主を探し出すという倒錯して錯綜した作劇というのを、改めて思いなおしてみる。
ところで、見ていて突飛かもしれないが「ゴーストバスターズ」の全部女性キャストにしたリメイクでクリス・ヘムズワースがやっていた「意識的に」おバカキャラとして演じていた役にケンがちょっとだぶって見えた。