浅瀬に船が横転しており、その前で子供が磯遊びしているという画から始まるのだが、その船から錆の匂いが立ちのぼるようなのがJ.G.バラードの小説を思わせる。
クローネンバーグは直接バラードの小説「クラッシュ」を映画化したこともあるし、テイストあるいは匂いとして通底するのはもっとある。
母親が子供を呼び寄せる、その時のロングに引いたサイズが妙に不安定で不吉な印象で、事実その印象通りに展開する。
さまざまな肉体の部分改造みたいなのが出てくるのはおなじみだが、芸術家役ということもあってヴィゴ・モーテンセンがクローネンバーグその人に見える。
身体中あちこちに耳をくっつけて踊るダンサーが出てくるのだが、見ようによっては「スキャナーズ」の周囲が考えることが強引に頭の中に入り込んでくる図のアレンジとも見える。
昔クローネンバーグが作った実験映画で同じタイトルがあったのだが、内容は関係ない。