繰り返される悪夢的な場面展開にハイコントラストな白黒画面が効いている。白黒だと抽象化されるので現実なのか夢なのか幻想なのか境目なく行き来できる。
儀介はMac(というちょっとハイブロウ?な機器を使っている)に送られてくるスパム類を初めは捨てているのだが、うっかり?クリックしてしまうと、画面が意味不明の記号の洪水の中に難民移民といった意味が部分的に通じるフレーズが混じる状態になるのがたとえばコンピューターウィルス感染を思わせるし、昨今の難民移民を時には妄想混じりで敵視する傾向を逆に照射しているようでもある。
歳のわりにIT機器に慣れてる感じだが、これから後、Macは電源を落として手書きの文字で遺書をしたためるようになる。
器用に料理をこなしているのは大学の専門が仏文というのと関係しているのか、IHクッキングヒーターを使っているのは老化に伴って炎が服に燃え移らないよう予防するためだろうが、妻の生前からやっていたのかどうか。
ひとりで住むにはやや広すぎる家で、たくさんの蔵書が至る所にあって死んだ後それらの本の整理を心配していたりする。あれが電子書籍だったらややこしいだろうな。