タイムループもののバリエーションなのだが、普通なら死んだらおしまいのところを死ぬたびに一定の時点に戻って繰り返す、というのがいかにもゲームのリセット感覚で、だからゲームばかりやっている今どき若い者は死をバーチャルなものにしか感じられないから命に対する敬意に欠けているのだと新聞やテレビで解説されるところにつながりそうな設定なのだが、トム・クルーズはいちいち自分の死を恐れないがヒロインというより相棒の死に対してはちゃんと反応しているのが気に入った。
つまり死んだら消えてなくなる以上当人にとっては死は存在せずあるのは死に対する恐怖だけだという考え方はあるけれど、それと他人の命に対するシンパシーとは別だということ。
原作は日本のライトノベルなわけだが、命を捨てている戦うところから経験値を上げて戦い方を身につけていくあたりも説得力あり。
同じことの繰り返しながら巧みに省略を効かせてくどい感じにならないに工夫した編集技術が光る。どのテイクをどこにはめ込むかでシナリオ上の位置づけとは別に相当考えたのではないか。
場所の設定がフランスの海辺というのは、もちろんノルマンディー上陸のイメージなのだろう。
ヒロインのエミリー・ブラントがいい。同じ小隊仲間のキャスティングにも役の描きこみこそ薄いが目が行き届いている。
ヒロインのでかい画にFull Metal Bitchと落書きされているのは「フルメタル・ジャケット」からとったものだろうし、曹長にいきなり罵られるのもそれっぽい。
出だしのトムは広告代理店社員で安全なところにいて人を戦場に駆り立てていたわけで、その宣伝映像は「ロボコップ」ぽい。そういえばキューブリックはベトナム戦争について「初めて広告代理店が仕切った戦争だ」と発言していた。
(☆☆☆★★)
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