代わりに時代劇としてはかなり異例の早いカッティングとスピードアップされたセリフで場面を運んでいくのだが、困ったことにピアノの演奏でいう「指が転がっている」感じでシーンの内容の伝達の方が追いついていっていない。
母衣武者の登場を揶揄してネット炎上した批評家がいたけれど、その母衣の意味を家康が説明したり、旗印を石成自ら書きながら意味を説明するシーンでもあまりにはやばやと通り過ぎるものでどういう意味なのかはっきり頭に残らない。
スタッフワークは優秀で合戦シーンのスケールなど見ごたえあるからそれほど不満足ではないけれど、全体としての人物相関図や歴史観といった見取り図が見えない困った結果になった。作っている側は当然それなりに作っていたはずだけれど、伝えるにあたって急ぎ足過ぎた感。
直木賞受賞作「梟の城」はじめ「忍び」を時代小説に持ち込んだのは司馬遼太郎の発明、と誰か書いていたが、客観的に武将たちの争いを観察する立場の忍び役の有村架純も全体像がもともと見えないものだからなんだか居心地悪そう。
音楽がブルガリアン・ヴォイス風だったりエンドタイトルを見るとディーリアスの曲が使われていたりするのが割と新鮮。
家康役の役所広司のお腹がぽこっと出ているのは、特殊メイクなのかな、やはり。
(☆☆☆)
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