晴、21度、77%
ほんの数年前のパンデミック、いったい何だったのでしょう?
パンデミックが始まったばかりのニューヨークが話の舞台です。自分が罹患したとは知らずに救急車で病院に搬送され、10日間の集中治療後、生死の境から生還する女性の話です。コロナ当初のニューヨークのことはテレビが度々流していました。たくさんの人が亡くなり葬儀もままならぬ状態で、遺体安置は冷蔵トラックが担っていた悲惨な状況でした。日本でも外出禁止、マスク着用と国からのお達しでした。
医学的なことはわかりませんが、主人公の女性は10日間、集中治療室で手当を受けその間、昏睡状態でした。そして寝ている間、夢を見続けました。目が覚めて、自分がなぜ病院にいるのかすら思い出せません。夢はパンデミックが始まる前、医者のフィアンセとバカンスに行く予定だったガラパコス諸島に彼女一人で出かけて帰る術がなくなり島で過ごした3ヶ月です。夢という言葉は適切ではないと思います。寝ている彼女は実体験のような3ヶ月を目覚めてからも確かに記憶しています。ガラパコスの景色、そこで出会った人、亀やフラミンゴ、イグアナ。初めてのガラパコスです。彼女にとっては夢でなく実体験だと思うのですが、医師たちも取り合ってくれません。そして何より彼女自身が夢ではなく自身の経験として忘れられずにいました。
コロナの症状以外、集中医療、薬物からの影響で後々までも苦しむ人が多かったことは、日本でも詳らかにされていません。今もなんらかの症状を抱えている人がいるはずです。
彼女はセラピストを頼り、友人、フィアンセを頼り、心身ともに回復します。でも、彼女な中にはガラパコスで過ごした自分が生きていす。現存の自分を超えて幻想と言われても昏睡状態で経験したガラパコスでの経験が息づいています。フィアンセとは微かなギャップで別れます。パンデミックが終わり、旅が出来るようになって彼女はガラパコスに向かいます。初めてのガラパコスです。夢で見たガラパコスではありません。自分の足元を見る旅です。話はそこで終わります。昏睡状態の中で出会った男性と巡り会うことができるか、読者は胸を躍らせます。
私の周りには幸い重症なコロナの人が一人もありませんでした。家族を亡くされた方たち、いまだに後遺症を抱える人たちがたくさんいらっしゃると思います。コロナの原因はなんだったのでしょう?あの外出禁止の期間のことは私には薄雲がかかった思い出です。
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