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65年近く私とずっと一緒のイタリアの「マイクロモザイク」のピルケースがあります。モザイクの面は一つも欠けずに本体も綺麗です。実はこの「ピルケース」は私が3歳の時デパートで万引きしたものです。
今はもうない福岡の「玉屋デパート」に「ローズサロン」という外商のコーナーがありました。昭和30年代半ばのデパートです。当時の高級品を扱うコーナーだったようです。母が足繁く通っていました。ガラスのショーケースを挟んで客は腰をかけて品物を見せてもらっていました。ある日デパートから戻った母は私のコートのポケットにこの「ピルケース」を見つけました。母は私に「取ったのか?」と問い詰めたかもしれません。記憶にありません。ただ直様私を連れてデパートに戻り、事情を話して買い取ったのがこの「ピルケース」です。この「ピルケース」を出してきては私が万引きした日の話をしました。ガラスのケースの上に出されていた「ピルケース」をポケットに入れた記憶はありません。でも母が幾度も話をするので、3歳の私がケースの上の「ピルケース」をポケットに入れる様子が見えるようです。
旅行に行く時は常備薬をこの「ピルケース」に入れて持って行きました。最近はあの味気ない小さなチャック付きのビニール袋に変わりました。場所を取りません。
65年経った今見てもこの「ピルケース」は私の好みです。6角の形といい、赤の色、花の組み具合、確かに私の好みです。そして手に取る度、3歳の私を思います。明るいガラスのショーケースの上に置かれたこの「ピルケース」をどんな気持ちで眺めて、ポケットにしまい込んだのか。「三つ児の魂、百までも」と言いますが、3歳の時、綺麗だ、好きだと思った「ピルケース」をこの歳になっても変わらず好きです。不思議な縁でずっと私の側にあり続ける「ピルケース」です。
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