曇、3度、60%
北風が吹き、季節がひと月先まで進んだ昨日でした。夕方の散歩の時に「大売り出し」の赤いのぼりを出している店を見ました。暮れ始めた街に「大売り出し」ののぼりを見た途端、私の気持ちは「昭和」にタイムスリプしてしまいました。
「大売り出し」ののぼりが立ち始めると街は師走に向けて慌ただしさを増します。行き交う人の足も小早く、それでいてクリスマス、お正月を前にした気持ちの高まりが街に溢れていました。「昭和」の頃は人の服装も今ほど派手ではなく貧しなりでした。子供達は水鼻を垂らしてそれを服の袖で拭う子もいました。それでも、「大売り出し」ののぼりが経つ頃には皆赤い頬に目を輝かせていたように思います。
「大売り出し」ののぼりの立つ街には湯気の立つ食べ物の匂いがしました。おうどん、お蕎麦、肉まん。ピザやカレーの匂いではありません。あの頃はボーナスなんてなかったのではないでしょうか。それでも年の瀬の用意に散財します。今より家族が肩を寄せ合って生活していた「昭和」です。家の中では練炭火鉢、灯油ストーブ、炬燵が温かさを届けてくれました。懐かしい時代です。
「大売り出し」の赤いのぼりから「昭和の日本」を思い出し心温かくに家に向かいました。ところが急に一つのことが胸に湧き上がりました。私は「平成の日本」の懐かしい情景が一つもないのです。「平成」という年号の間30年間、日本から離れて暮らしたことを改めて思い起こしました。「昭和の日本」に心慰められ、「平成の日本」を知らない自分を寂しく思った、北風の吹き始めた夕方でした。
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